発症後4.5時間超の虚血性脳卒中またはwake-up脳卒中で救済可能な脳組織を有する患者に対し、アルテプラーゼの投与はプラセボよりも、良好な機能的アウトカムを達成することが示された。症候性脳内出血の発生頻度はアルテプラーゼが有意に高率だったが、著者は「血栓溶解治療のネットベネフィットを打ち消すものではなかった」と述べている。オーストラリア・メルボルン大学のBruce C. V. Campbell氏らが、システマティック・レビューとメタ解析を行い明らかにし、Lancet誌オンライン版2019年5月22日号で発表した。現行ではアルテプラーゼによる脳卒中の血栓溶解療法は、発症後0~4.5時間と推奨されている。
3ヵ月時点の最良の機能的アウトカムを評価
研究グループの本検討における目的は、発症後4.5時間超の症候性脳卒中または起床時症候性脳卒中の患者で血栓溶解治療によりベネフィットを得られる救済可能な脳組織を有する患者を、灌流画像検査により特定できるかどうかを調べることだった。
2006年1月1日~2019年3月1日に英語で発表された無作為化試験結果をPubmedで検索し、個別患者データを用いてシステマティック・レビューとメタ解析を行った。また、血栓溶解療法に関する既報のシステマティック・レビューの引用文献の再評価や、虚血性脳卒中に関する介入試験についてClinicalTrials.govの検索も行った。
解析の包含適格基準は、発症後4.5時間超の虚血性脳卒中またはwake-up脳卒中で、灌流・拡散MRIまたはCT灌流画像検査を受けた18歳以上の患者を包含する、アルテプラーゼvs.プラセボの比較試験とした。
主要アウトカムは、ベースライン時の年齢と臨床的重症度で補正後の、3ヵ月時点の最良の機能的アウトカム(修正Rankinスケール[mRS]スコアが0~1)とした。安全性のアウトカムは、死亡と症候性脳内出血だった。
ベースライン時の年齢とNIH脳卒中スケール(NIHSS)スコアで補正し、混合効果ロジスティック回帰モデルを用いてオッズ比(OR)を算出し評価した。
症候性脳内出血リスクはアルテプラーゼ群で10倍に
適格試験として、「EXTEND」「ECASS4-EXTEND」「EPITHET」の3試験が特定された。3試験には合計414例が参加しており、アルテプラーゼ群には213例(51%)、プラセボ群は201例(49%)が割り付けられていた。そのうち3ヵ月時点のmRS評価データを有していたのは、それぞれ211例、199例だった。
3ヵ月時点における最良の機能的アウトカムを達成していたのは、アルテプラーゼ群76/211例(36%)、プラセボ群58/199例(29%)だった(補正後OR:1.86、95%信頼区間[CI]:1.15~2.99、p=0.011)。
症候性脳内出血の発生患者数は、アルテプラーゼ群がプラセボ群よりも有意に多かったが(10/213例[5%]vs.1/201例[1%未満]、補正後OR:9.7、95%CI:1.23~76.55、p=0.031)、死亡患者数は両群間で有意差はなかった(29/213例[14%]vs.18/201例[9%]、補正後OR:1.55、95%CI:0.81~2.96、p=0.19)。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)