チカグレロル+アスピリン併用療法を受けた軽症脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)患者、とくにCYP2C19機能喪失型変異保有者では、クロピドグレル+アスピリン併用療法を受けた患者と比較して、高い血小板反応性を示す患者の割合が低いことが示された。中国・首都医科大学のYilong Wang氏らが、軽症脳卒中/TIA患者を対象にチカグレロル+アスピリンのクロピドグレル+アスピリンに対する優越性を検証する第II相非盲検(評価者盲検)無作為化比較試験「Platelet Reactivity in Acute Stroke or Transient Ischaemic Attack trial:PRINCE試験」の結果を報告した。急性冠症候群においては、チカグレロル+アスピリン併用はクロピドグレル+アスピリン併用と比較し、CYP2C19の変異の有無にかかわらず有効であることが示されているが、軽症脳卒中/TIA患者では検証されていなかった。BMJ誌2019年6月6日号掲載の報告。
675例を対象に、アスピリンへのチカグレロル併用vs.クロピドグレル併用を比較
PRINCE試験は、2015年8月~2017年3月の期間に、中国の26施設で実施された。対象は、軽症の急性脳卒中またはTIA患者675例で、発症24時間以内にチカグレロル(負荷投与量180mg、維持量90mg 1日2回)、またはクロピドグレル(負荷投与量300mg、維持量75mg/日)のいずれかと、アスピリン(100mg/日を最初の21日間)を併用する群(それぞれチカグレロル併用群、クロピドグレル併用群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。
主要評価項目は、90日時点で高い血小板反応性を示す患者の割合であった。血小板反応性の高さは、VerifyNow P2Y
12 reaction units(PRU)>208と定義した。
副次評価項目は、クロピドグレルの代謝に影響を及ぼす遺伝子変異を有する患者における、90日時点の高い血小板反応性と、90日・6ヵ月・1年時点でのあらゆる脳卒中(虚血性/出血性)の再発などであった。
チカグレロル併用群で高い血小板反応性の患者が少なく、脳卒中再発率も低下
90日時点で高い血小板反応性を示したのは、チカグレロル併用群280例中35例(12.5%)、クロピドグレル併用群290例中86例(29.7%)であった(リスク比[RR]:0.40、95%信頼区間[CI]:0.28~0.56、p<0.001)。CYP2C19機能喪失型変異保有者では、10.8% vs.35.4%であった(RR:0.31、95%CI:0.18~0.49、p<0.001)。
脳卒中の発現率は、チカグレロル併用群6.3%(21/336例)、クロピドグレル併用群8.8%(30/339例)であった(ハザード比[HR]:0.70、95%CI:0.40~1.22、p=0.20)。大動脈アテローム性硬化症患者では、チカグレロル併用群はクロピドグレル併用群と比較して、90日時点の脳卒中再発が減少した(6.0% vs.13.1%、HR:0.45、95%CI:0.20~0.98、p=0.04)。
大出血または小出血の発生頻度に、チカグレロル併用群とクロピドグレル併用群とで有意差はなかった(4.8% vs.3.5%、p=0.42)。