急性脳損傷患者の15%で、運動指令に対する行動反応はなくても、脳波測定(EEG)では指令に反応を示す記録がみられ、脳が活性化していることが明らかになった。米国・コロンビア大学のJan Claassen氏らが、脳損傷患者を対象に、音声による運動指令に反応する脳活動と予後への影響を検証した前向き試験の結果を報告した。臨床的に無反応な患者において、体を動かすよう声掛けをした際に脳活動を示す脳波が検出される場合がある。そのような認知と運動の解離が、脳損傷後の数日間にみられる割合や予後についての重要性は、これまで十分に解明されていなかった。NEJM誌2019年6月27日号掲載の報告。
無反応患者を対象に、声による運動指令に対する脳活動を脳波で確認
研究グループは、2014年7月~2017年9月の期間に、1施設の集中治療室で、さまざまな原因による急性脳損傷があり、音声による運動指令に無反応な患者(痛み刺激部位を特定できる患者や、視覚刺激で凝視または追視できる患者を含む)を前向きに連続登録した。
「手を動かして」という指令に対する脳活動を、機械学習を応用したEEGにより検出。また、12ヵ月時点の機能アウトカムを、Glasgow Outcome Scale-Extended(GOS-E:スコア範囲1~8、高いほうが良好であること示す)で評価した。
15%の認知と運動の解離を認めた患者のうち、半数で解離が解消
脳損傷後の期間中央値4日の時点で、無反応患者104例中16例(15%)でEEGによる脳活動が検出された。これら16例中8例(50%)、ならびに脳活動が検出されなかった88例中23例(26%)は、退院前には指令に従うことができるまでに改善した。
12ヵ月時のGOS-Eスコアが4以上(8時間独力で機能することを意味する)であったのは、脳活動が検出された患者で44%(7/16例)、検出されなかった患者で14%(12/84例)であった(オッズ比:4.6、95%信頼区間:1.2~17.1)。
なお、著者は、さまざまな原因(心停止、脳内出血、頭部外傷または硬膜下血腫、クモ膜下出血)による脳損傷患者を対象としたこと、12ヵ月時の追跡調査は電話によるもので直接行っていないこと、鎮静が交絡因子である可能性などを挙げて、結果については限定的だとしている。
(医学ライター 吉尾 幸恵)