HPVワクチン、感染と異形成の双方を抑制/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2019/07/08

 

 ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種プログラムは、女性のHPV感染および子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)Grade2(中等度)以上の異形成(2+)を抑制し、男女の肛門性器疣贅を減少させることを示す強固なエビデンスが、カナダ・ラヴァル大学のMelanie Drolet氏らHPV Vaccination Impact Study Groupによる6,000万人以上を最長8年間追跡したデータのメタ解析で得られた。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2019年6月26日号に掲載された。HPVワクチン接種が開始されて10年以上が経過し、現在、99の国と地域で接種プログラムが導入されており、リアルワールドにおける有効性の評価や年齢別の効果の定量化が求められている。

HPVワクチン接種、14ヵ国の最長8年時のデータのメタ解析
 研究グループは、2015年に、9つの高所得国でHPVワクチン接種プログラム導入から最長4年時の効果に関するメタ解析を行っており、今回は、14ヵ国の最長8年時のデータを解析した(世界保健機関[WHO]などの助成による)。

 前回の報告と同様の方針で、2014年2月1日~2018年10月11日までに発表された研究を検索した。一般集団において、HPVワクチン接種前後の期間で、1つ以上のHPV関連エンドポイント(HPV性器感染、肛門性器疣贅の診断、組織学的に確定されたCIN2+)の頻度(有病率または罹患率)を比較している、HPVワクチン接種前後の同一集団データを用いた研究、および患者登録の方法を用いた研究を対象とした。

 主要評価項目は、HPVワクチン接種前と接種後の期間におけるHPV関連エンドポイントの頻度(有病率または罹患率)の比較における相対リスク(RR)とした。性別、年齢、HPVワクチン接種導入以降の年数で層別化した。変量効果モデルを用いて統合RRを推計した。


HPVワクチン接種により大きな直接効果とともに集団免疫効果も
 メタ解析では、14の高所得国から報告された65件の研究(HPV感染23件、肛門性器疣贅29件、CIN2+ 13件)の論文が対象となった。2007~15年の8年間(CIN2+は9年間)における6,000万人以上のデータが解析に含まれた。

 HPVワクチン接種後5~8年の期間に、HPV 16/18型の有病率は13~19歳の女性で83%(RR:0.17、95%信頼区間[CI]:0.11~0.25)、20~24歳の女性では66%(0.34、0.23~0.49)、それぞれ有意に低下した。そのほとんどがHPVワクチン接種を受けていない25~29歳の女性では、1~4年の期間ではHPV 16/18型の有病率に有意な差は認めなかった(0.86、0.69~1.07)のに対し、5~8年後には37%(0.63、0.41~0.97)有意に低下しており、集団免疫効果が示唆された。

 また、HPVワクチン接種後5~8年の期間に、HPV 31/33/45型の有病率は13~19歳の女性で54%(RR:0.46、95%CI:0.33~0.66)有意に低下したが、20~24歳の女性では有意な差はみられなかった(0.72、0.47~1.10)。

 参加者のHPVワクチン接種率が高かった(≧50%)試験は、低かった(<50%)試験に比べ、全般にHPV 16/18型およびHPV 31/33/45型の有病率が低かったが、有意差はなかった。

 肛門性器疣贅の診断は、HPVワクチン接種後5~8年の期間に、15~19歳の女性で67%(RR:0.33、95%CI:0.24~0.46)、20~24歳の女性で54%(0.46、0.36~0.60)、25~29歳の女性では31%(0.69、0.53~0.89)、それぞれ有意に低下した。また、HPVワクチン接種を受けていない15~19歳の男性でも48%(0.52、0.37~0.75)、20~24歳の男性では32%(0.68、0.47~0.98)、それぞれ有意に低下しており、集団免疫効果が示唆された。

 HPVワクチン接種後5~9年間に、CIN2+は15~19歳の女性で51%(RR:0.49、95%CI:0.42~0.58)、20~24歳の女性では31%(0.69、0.57~0.84)、それぞれ有意に低下した。これに対し、同時期に、そのほとんどがHPVワクチン接種を受けていない25~29歳の女性では、CIN2+が19%(1.19、1.06~1.32)有意に増加し、30~39歳の女性でも23%(1.23、1.13~1.34)有意に増加した。

 著者は、「原因(高リスクのHPV感染)と疾患エンドポイント(CIN2+)の双方が有意に減少したことから、HPVワクチン接種の実施により、リアルワールドにおいて子宮頸がんが予防されたことを示す強固なエビデンスがもたらされた」とし、「複数集団へのHPVワクチン接種と高い接種率によって、より大きな直接効果と集団免疫効果がもたらされた」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)