70歳以下のCLLの1次治療、イブルチニブ+リツキシマブ併用が有効/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2019/08/14

 

 70歳以下の未治療の慢性リンパ性白血病(CLL)患者の治療において、イブルチニブ+リツキシマブ併用レジメンは標準的な化学免疫療法レジメンと比較して、無増悪生存(PFS)と全生存(OS)がいずれも有意に優れることが、米国・スタンフォード大学のTait D. Shanafelt氏らが行ったE1912試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2019年8月1日号に掲載された。70歳以下の未治療CLL患者の標準的な1次治療は、フルダラビン+シクロホスファミド+リツキシマブによる化学免疫療法とされ、とくに免疫グロブリン重鎖可変領域(IGHV)の変異を有する患者で高い効果が確認されているが、重度の骨髄抑制や、わずかながら骨髄異形成のリスクがあるほか、T細胞免疫抑制による日和見感染などの感染性合併症を含む毒性の問題がある。ブルトン型チロシンキナーゼの不可逆的阻害薬であるイブルチニブは、第III相試験において、フレイルが進行したため積極的な治療を行えない未治療CLL患者でPFSとOSの改善が報告されているが、70歳以下の患者の1次治療のデータは少ないという。

米国の無作為化第III相試験の中間解析の結果を報告
 本研究は、米国で実施された多施設共同非盲検無作為化第III相試験であり、2014年3月~2016年6月の期間に患者登録が行われた(米国国立がん研究所[NCI]とPharmacyclicsの助成による)。

 対象は、年齢70歳以下の未治療のCLLまたは小リンパ球性リンパ腫(SLL)の患者であり、17p13欠失を有する患者はフルダラビン+シクロホスファミド+リツキシマブへの反応が低いため除外された。

 被験者は、イブルチニブを単独で1サイクル投与後にイブルチニブ+リツキシマブを6サイクル投与し、その後はイブルチニブを病勢進行まで投与する群、またはフルダラビン+シクロホスファミド+リツキシマブによる化学免疫療法を6サイクル施行する群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。

 主要エンドポイントはPFSであり、副次エンドポイントはOSとした。この論文では、予定されていた中間解析の結果が報告された。

病勢進行/死亡リスクが65%、死亡リスクが83%低減
 529例が無作為化の対象となり、イブルチニブ+リツキシマブ群に354例、化学免疫療法群には175例が割り付けられた。全体の平均年齢は56.7±7.4歳、女性が32.7%で、IGHV変異陽性例は28.9%であった。19例がプロトコールで規定された治療を開始しなかった。

 追跡期間中央値33.6ヵ月の時点で、3年PFS率はイブルチニブ+リツキシマブ群が89.4%(95%信頼区間[CI]:86.0~93.0)と、化学免疫療法群の72.9%(65.3~81.3)に比べ有意に優れ(病勢進行または死亡のハザード比[HR]:0.35、95%CI:0.22~0.56、p<0.001)、プロトコールで規定された中間解析の有効性の閾値を満たした。

 3年OS率も、イブルチニブ+リツキシマブ群が化学免疫療法群よりも良好であった(98.8% vs.91.5%、死亡のHR:0.17、95%CI:0.05~0.54、p<0.001)。

 PFSの事前に規定されたサブグループ解析では、11q22.3欠失例を含め、すべてのサブグループでイブルチニブ+リツキシマブ群が良好であった。また、IGHV変異陰性例では、3年PFS率はイブルチニブ+リツキシマブ群が化学免疫療法よりも良好であったが(90.7% vs.62.5%、病勢進行または死亡のHR:0.26、95%CI:0.14~0.50)、IGHV変異陽性例では有意な差はなかった(87.7% vs.88.0%、0.44、0.14~1.36)。

 一方、完全奏効の割合(17.2% vs.30.3%)および12サイクル時の微小残存病変(MRD)陰性の割合(8.3% vs.59.2%)は、イブルチニブ+リツキシマブ群のほうが低かった。
 Grade3以上の有害事象(試験薬に起因しないものも含む)の頻度は両群でほぼ同等で、イブルチニブ+リツキシマブ群が352例中282例(80.1%)、化学免疫療法群は158例中126例(79.7%)に認められた。

 Grade3以上の好中球減少(90例[25.6%]vs.71例[44.9%]、p<0.001)および感染性合併症(37例[10.5%]vs.32例[20.3%]、p=0.005)は、イブルチニブ+リツキシマブ群のほうが頻度は低かったが、Grade3以上の高血圧の頻度は高かった(66例[18.8%]vs.13例[8.2%]、p=0.002)。イブルチニブ+リツキシマブ群では、Grade3以上の心毒性が23例(6.5%)(心房細動/粗動13件、心臓性胸痛3件、上室頻拍2件、非致死的心不全2件、心膜液2件、洞徐脈1件、心室頻拍1件、非致死的心停止1件、心筋梗塞1件)に認められた。

 著者は、「イブルチニブ治療の無期限の使用は、高額な費用および長期的な毒性作用の可能性と関連しており、薬剤耐性につながるクローン選択(clonal selection)のリスクを高める可能性もある」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)