心臓カテーテル検査を行い即時の経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受ける患者に対する血管内超音波(IVUS)イメージングについて、近赤外線分光法(NIRS)によるイメージングの非閉塞領域に対する安全性が確認され、また、その後の非責任病変部の主要有害心血管イベント(NC-MACE)のリスクが高い患者、および発生の可能性がある部位の特定に役立つことが示された。米国・MedStar Washington Hospital CenterのRon Waksman氏らが、前向きコホート試験「Lipid-Rich Plaque:LRP試験」の結果を報告した。NIRS-IVUSイメージングは、急性冠症候群または心筋梗塞に関連し血行再建あるいは心臓死につながる脂質に富むプラーク(lipid-rich plaque:LRP)を検出できるが、将来的にイベントを呈する可能性がある冠動脈や患者を予測する検討は小規模で、プラークに立脚した仮説は検証されていなかった。著者は今回の結果を踏まえて、「NIRS-IVUSは、臨床診療で不安定プラークを有する患者およびそのプラークを検出できる初回イメージングツールとして、考慮すべきである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2019年9月27日号掲載の報告。
冠動脈疾患疑い患者約1,500例の前向きコホート研究
研究グループは、イタリア、ラトビア、オランダ、スロバキア、英国、米国の44施設において、ad hoc PCI(病変評価後にそのままPCI)となりうる、心臓カテーテル検査を受ける冠動脈疾患疑いの患者を登録し、NIRS-IVUSを用いた非責任病変部のスキャンを実施した。
本試験には患者とプラークの2つの階層的な主要仮説があり、それぞれLipid Core Burden Index最大値4mm(maxLCBI
4mm)とNC-MACEとの関連性を検証した。LRPが大きな患者(≧250 maxLCBI
4mm)とLRPが小さな患者(<250 maxLCBI
4mm)の半数を無作為に抽出し、24ヵ月間追跡した。
2014年2月21日~2016年3月30日の期間で計1,563例が登録された。
将来的なリスクが高い不安定プラークの部位と患者の特定に成功
NIRS-IVUSデバイス関連事象は、6例(0.4%)で確認された。maxLCBI
4mmが解析可能な患者1,271例(平均[±SD]年齢64±10歳、男性883例[69%]、女性388例[31%])が追跡調査に組み込まれ、NC-MACEの2年累積発生率は9%(103例)であった。
患者レベルの解析では、maxLCBI
4mmが100単位増加するごとのNC-MACE発生の補正前ハザード比(HR)は1.21(95%信頼区間[CI]:1.09~1.35、p=0.0004)、補正後HRは1.18(95%CI:1.05~1.32、p=0.0043)であった。maxLCBI
4mmが400を超える患者では、NC-MACEの補正前HRは2.18(95%CI:1.48~3.22、p<0.0001)、補正後HRは1.89(95%CI:1.26~2.83、p=0.0021)であった。
プラークレベルの解析では、maxLCBI
4mmが100単位増加するごとのNC-MACE発生の補正前HRは1.45(95%CI:1.30~1.60、p<0.0001)であった。maxLCBI
4mmが400を超える部位では、NC-MACEの補正前HRは4.22(95%CI:2.39~7.45、p<0.0001)で、補正後HRは3.39(95%CI:1.85~6.20、p<0.0001)であった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)