承認された新薬と公的資金支援の関係は?/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2019/11/05

 

 過去10年間に米国で承認された新薬の少なくとも4つに1つは、公的支援を受けた研究が開発の後期段階において重要な役割を果たしており、そのうちの4分の3が直接的に公的資金の支援を受けた研究を起源とし、残りの4分1は公的研究機関からのスピンオフ企業によって創製されたことが、米国・ハーバード大学医学大学院のRahul K. Nayak氏らの調査で明らかとなった。研究の詳細は、BMJ誌2019年10月23日号に掲載された。新薬開発の多くは、公的支援を受けた調査が、基礎科学研究において実質的な役割を担っている。1990~2007年に米国で承認された新規分子化合物の約14%は、開発の後期段階において、特許の取得が可能な研究の資金を公的部門の研究機関から得ているという。

公的資金支援への依存度を調査するコホート研究

 研究グループは、新薬開発が公的資金による支援にどの程度依拠しているかを調査する目的で、コホート研究を行った(Arnold Venturesなどの助成による)。

 2008年1月~2017年12月の期間に、新薬承認申請の過程を経て米国食品医薬品局(FDA)の承認を得た、1つ以上の新規分子化合物を含有するすべての新薬を対象とした。

 公的部門の研究機関やスピンオフ企業による後期段階の研究への寄与、および個々の薬剤の規制当局による承認の過程や画期的医薬品(first-in-class)の指定を体系的に記録した、特許または医薬品開発の関連文書を解析した。

迅速審査や画期的医薬品の指定を受ける確率が高い
 10年間に、FDAよって1つ以上の新規分子化合物を含有する薬剤248種(253種の新規分子化合物を含む)が承認を受けていた。これらの薬剤のうち48種(19%)が公的支援を受けた研究開発を起源とし、14種(6%)は公的支援を受けた研究計画からスピンオフした企業により創製されていた。

 これら公的支援を受けた研究を発端とする薬剤は、それ以外の薬剤と比較して、FDAにより迅速な審査の指定(expedited designation)を1回以上受ける確率(68% vs.47%、p=0.005)や、画期的医薬品の指定を受ける確率(45% vs.26%、p=0.007)が高く、治療上の重要性が高い可能性が示された。

 著者は「この調査で得られた知見は、施策の立案者とって、これらの製剤の適正価格や収益の算定において意義のあるものとなる可能性がある」としている。

(医学ライター 菅野 守)