米国南部における大規模ファストフードチェーン店では、カロリー表示メニューを導入後も、平均購入カロリー量はわずかに減少しただけで、その減少幅も1年後には小さくなっていたことが、米国・ハーバード公衆衛生大学院のJoshua Petimar氏らによる準実験的研究の結果、明らかにされた。米国では2018年5月からレスランチェーンでカロリー表示が義務づけられている。しかし、この政策が購入カロリー量へ及ぼす影響についてのエビデンスは混沌としており、大部分の先行研究は試験規模が小さいなど不十分であった。とくに、肥満率が高い非都市部や南部地域を対象とした適切な評価は行われていなかったという。BMJ誌2019年10月30日号掲載の報告。
米国南部の大規模ファストフードチェーン104店で調査
研究グループは、大規模レストランチェーンにおけるカロリー表示メニューの導入が、平均購入カロリー量と関連したか否かを調べるため、2015年4月~2018年4月に、米国南部(ルイジアナ州、テキサス州、ミシシッピ州)で3つの異なるレストランチェーンを展開する全国規模のファストフード企業で準実験的研究を行った。
解析対象となったのは、2017年4月にカロリー表示メニューを導入(店内・ドライブスルー)し、導入前(2015年4月~2017年4月)と導入後(2017年4月~2018年4月)の1週間ごとの売上データを有していたレストラン104店。
主要アウトカムは、反事実的仮説(たとえば、介入が行われなかった場合は介入前の傾向が持続するなど)と比較した、導入後の平均購入カロリー量の全量および変化の傾向で、線形混合モデルを用いた分割時系列解析で評価した。
副次アウトカムは、食事カテゴリーごと(メイン料理、サイドメニュー、砂糖入り飲料)に評価した。サブグループ解析では、レストランがある国勢調査標準地域(国勢調査を行うための定義済み地域)の社会人口統計学的特性別による、カロリー表示の影響を推算した。
カロリー表示メニュー導入後、一時的に減少するが、増加傾向は抑制されず
解析サンプルは、1万4,352店週であった。3年間に104店全体で、単位購入(transaction)発生は4,906万2,440件、食事カテゴリー購入発生は2億4,272万6,953件であった。
カロリー表示導入後、単位購入当たりのカロリー量は、60カロリー(95%信頼区間[CI]:48~72、約4%)減少したことが観察された。しかし、導入後の1年間の購入カロリー量は、0.71カロリー/単位購入/週(95%CI:0.51~0.92)と増大傾向がみられ、これは導入前のベースライン増加傾向推算値0.53(0.36~0.70)を上回っていた。これらの結果は、感度解析での異なる分析仮定にも概して確認された。
導入後の購入カロリー量減少とその後の変化傾向は、メイン料理や砂糖入り飲料と比べてサイドメニューで強かった。
また、導入後の減少は、所得中央値が高い地区と低い地区で同等であったが、その後に増加した変化傾向は、低所得地区(0.94カロリー/単位購入/週、95%CI:0.67~1.21)のほうが高所得地区(0.50、0.19~0.81)よりも大きかった。
(ケアネット)