X線画像で明確な所見のない体軸性脊椎関節炎患者の治療において、イキセキズマブはプラセボに比べ、疾患の徴候と症状(ASAS40)を有意に改善することが、米国・オレゴン健康科学大学のAtul Deodhar氏らが行った「COAST-X試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年12月5日号に掲載された。イキセキズマブはインターロイキン17A(IL-17A)に高い親和性を有するモノクローナル抗体であり、すでにX線所見を伴う体軸性脊椎関節炎(別名:強直性脊椎炎)における有効性が報告されている。
イキセキズマブ2種の投与法とプラセボをASAS40の達成で比較
本研究は、欧州、日本を含むアジア、北米、南米の15ヵ国107施設が参加した52週の二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験であり、2016年8月2日~2018年1月29日の期間に患者登録が行われた(Eli Lilly and Companyの助成による)。
対象は、年齢18歳以上、X線画像で明確な仙腸関節炎所見がみられない活動性の体軸性脊椎関節炎(X線所見を伴わない体軸性脊椎関節炎)で、客観的な炎症の徴候(MRI所見またはC反応性蛋白>5mg/L)があり、2剤以上の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の効果が不十分またはNSAID不耐の患者であった。
被験者は、イキセキズマブ(80mg)を4週ごと(Q4W)に投与する群、同2週ごと(Q2W)に投与する群、またはプラセボ群に1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。16週以降は担当医の裁量で、基礎治療薬の変更や非盲検下でのQ2Wへの切り換え、あるいはこれら双方が許容された。
主要エンドポイントは、16週および52週時の国際脊椎関節炎評価学会(ASAS)の基準によるASAS40の達成とした。ASAS40は、主要ドメインの4項目(患者による疾患活動性の総合評価、脊椎痛、機能、炎症)のうち3項目以上で、ベースラインから40%以上かつ2単位(0~10点)以上の改善が認められ、さらに残りの1項目でまったく悪化が認められない場合と定義された。治療を切り換えた患者は、ロジスティック回帰分析ではnon-responderとされた。
ASAS40達成率は52週時でイキセキズマブQ4W群30%、Q2W群31%、プラセボ群13%
303例が登録され、プラセボ群に105例(平均年齢39.9[SD 12.4]歳、女性58%)、イキセキズマブQ4W群に96例(40.9[14.5]歳、48%)、イキセキズマブQ2W群には102例(40.0[12.0]歳、52%)が割り付けられた。96%が16週の治療を、87%が52週の治療を完遂した。
2つの主要エンドポイントはいずれも満たされた。すなわち、16週時のASAS40達成率は、イキセキズマブQ4W群が35%(34/96例)、イキセキズマブQ2W群が40%(41/102例)、プラセボ群は19%(20/105例)であった(Q4W群vs.プラセボ群p=0.0094、Q2W群vs.プラセボ群p=0.0016)。また、52週時のASAS40達成率は、それぞれ30%(29/96例)、31%(32/102例)、13%(14/105例)であった(Q4W群vs.プラセボ群p=0.0045、Q2W群vs.プラセボ群p=0.0037)。
強直性脊椎炎疾患活動性スコア(Ankylosing Spondylitis Disease Activity Score:ASDAS)<2.1(低疾患活動性)の達成率も、イキセキズマブによる2つの治療群がプラセボ群に比べ有意に優れた(16週時:Q4W群28%[対プラセボ群p=0.0080]、Q2W群32%[同p=0.0009]、プラセボ群12%、52週時:30%[同p=0.0003]、27%[同p=0.0009]、9%)。
同様に、BASDAI(Bath Ankylosing Spondylitis Disease Activity Index)、SF-36 PCS(Medical Outcomes Study 36-item Short-Form Health Survey Physical Component Score)、SPARCC(Spondyloarthritis Research Consortium of Canada)の仙腸関節スコア(16週のみ)も、イキセキズマブ群で有意に良好であった。
イキセキズマブ群で最も頻度の高い治療関連有害事象は鼻咽頭炎(Q4W群19%、Q2W群16%)と注射部位反応(11%、17%)であった。とくに注目すべき治療関連有害事象については、Q4W群で重篤な感染症が1例に認められた。重篤な有害事象は4例(Q4W群2例、Q2W群1例、プラセボ群1例)に、有害事象による治療中止も4例(1例、1例、2例)にみられた。悪性腫瘍および死亡の報告はなかった。また、新たな安全性シグナルは特定されなかった。
著者は、「イキセキズマブは、X線画像で明確な所見のない体軸性脊椎関節炎で、NSAIDの効果が不十分または不耐の患者において、新たな治療選択肢となる可能性が示唆される」としている。
(医学ライター 菅野 守)