乳房温存手術後の放射線療法において、温存乳房内再発(IBTR)の予防に関して、加速乳房部分照射(APBI)の全乳房照射(WBI)に対する非劣性が示された。ただし、APBIでは急性毒性の発現は少ないものの、中等度の晩期有害事象の増加と整容性不良が認められた。カナダ・マックマスター大学およびJuravinski Cancer CenterのTimothy J. Whelan氏らが、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドのがんセンター33施設で実施した多施設共同無作為化非劣性試験「RAPID試験」の結果を報告した。WBIは、整容性が良好で局所再発を低下させるものの、乳房温存手術後3~5週間にわたり1日1回照射が必要であることから、より簡便な方法として腫瘍床に1週間照射するAPBIが開発された。Lancet誌2019年12月14日号掲載の報告。
乳がん患者2,135例をAPBI群とWBI群に無作為化、IBTR率を評価
研究グループは、乳房温存手術を受けた非浸潤性乳管がんまたはリンパ節転移陰性の40歳以上の乳がん患者を、APBI群(38.5Gy/10回、1日2回で5~8日間)またはWBI群(42.5Gy/16回、1日1回21日間、または50Gy/25回、1日1回35日間)に1対1の割合で無作為に割り付けた(非盲検)。
主要評価項目はIBTRで、APBIのWBIに対する非劣性マージンは、IBTRハザード比(HR)の両側90%信頼区間(CI)上限値が2.02未満とした。
2006年2月7日~2011年7月15日に2,135例が登録され、APBI群1,070例、WBI群1,065例に無作為化された。APBI群のうち6例は治療前に同意撤回、4例は放射線治療を受けず、16例はWBIを受け、WBI群では16例が同意撤回、2例が放射線治療を受けなかった。また、追跡不能および追跡期間中の撤回が、APBI群で14例および9例、WBI群でそれぞれ20例および35例であった。
APBIはWBIに対して非劣性
追跡期間中央値8.6年(IQR:7.3~9.9)において、8年累積IBTR率はAPBI群で3.0%(95%CI:1.9~4.0)、WBI群で2.8%(95%CI:1.8~3.9)であった。WBIに対するAPBIのHRは1.27(90%CI:0.84~1.91)であり、非劣性が認められた。
急性放射線毒性(放射線療法開始後3ヵ月以内、Grade2以上)の発現率は、APBI群(28%、300/1,070例)がWBI群(45%、484/1,065例)より有意に低かった(p<0.0001)。
一方、晩期放射線毒性(3ヵ月以降、Grade2以上)の発現率は、APBI群(32%、346/1,070例)がWBI群(13%、142/1,065例)より有意に高かった(p<0.0001)。
また、整容性不良(fairまたはpoor)の患者の割合も、APBI群がWBI群より3年時(絶対群間差:11.3%、95%CI:7.5~15.0)、5年時(16.5%、12.5~20.4)および7年時(17.7%、12.9~22.3)のいずれにおいても高率であった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)