環状鉄芽球を伴う比較的リスクが低い骨髄異形成症候群(MDS)で、定期的に赤血球輸血を受けており、赤血球造血刺激因子製剤(ESA)に抵抗性または反応する可能性が低い、あるいは有害事象でこれらの製剤を中止した患者の治療において、luspaterceptは貧血の重症度を低下させることが、フランス・パリ第7大学のPierre Fenaux氏らが行った「MEDALIST試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年1月9日号に掲載された。ESA治療が無効の貧血を伴う比較的リスクが低いMDSの患者は、一般に赤血球輸血に依存性となる。luspaterceptは、SMAD2とSMAD3のシグナル伝達を抑制して赤血球の成熟を促すために、トランスフォーミング増殖因子βスーパーファミリーのリガンドと結合する組み換え融合蛋白で、第II相試験で有望な結果が報告されている。
輸血非依存期間を評価するプラセボ対照無作為化試験
本研究は、11ヵ国65施設が参加した二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験であり、2016年3月~2017年6月に患者登録が行われた(CelgeneおよびAcceleron Pharmaの助成による)。
対象は、年齢18歳以上、WHO基準で環状鉄芽球を伴うMDSで、国際予後判定システム改訂版(IPSS-R)の定義で超低リスク、低リスク、中等度リスクの病変を有し、定期的に赤血球輸血(割り付け前の16週に、≧2単位/8週)を受けており、ESAに抵抗性または反応する可能性が低い、あるいは有害事象でこれらの製剤を中止した患者であった。
被験者は、luspatercept(1.0~1.75mg/kg体重)またはプラセボを3週ごとに皮下投与する群に無作為に割り付けられた。
主要評価項目は、1~24週における8週間以上の輸血非依存の状態とし、主な副次評価項目は1~24週および1~48週の双方における12週間以上の輸血非依存とした。
主要評価項目:38% vs.13%
229例が登録され、153例がluspatercept群、76例はプラセボ群に割り付けられた。全体の年齢中央値は71歳(範囲26~95)で、63%が男性であった。IPSS-R基準による病変の重症度別の患者割合は、超低リスクが10%、低リスクが72%、中等度リスクが17%だった。
24週時に、8週間以上の輸血非依存が観察された患者の割合は、luspatercept群が38%と、プラセボ群の13%に比べ有意に良好であった(p<0.001)。
24週時と48週時に12週間以上の輸血非依存を達成した患者の割合は、いずれもluspatercept群がプラセボ群よりも高かった(1~24週:28% vs.8%、1~48週:33% vs.12%、いずれもp<0.001)。
また、24週時と48週時に16週間以上の輸血非依存を達成した患者の割合は、いずれもluspatercept群がプラセボ群よりも良好だった(1~24週:19% vs.4%、1~48週:28% vs.7%)。
luspatercept関連の全Gradeの有害事象のうち、とくに頻度が高かったのは、疲労(27%)、下痢(22%)、無力症(20%)、悪心(20%)、めまい(20%)であった。Grade3/4の有害事象は、luspatercept群42%、プラセボ群45%に認められた。1つ以上の重篤な有害事象は、それぞれ31%および30%にみられた。有害事象の発現率は経時的に低下した。
著者は、「luspaterceptがSMAD2とSMAD3のシグナル伝達系に及ぼす作用の正確なメカニズムは完全には解明されていないが、輸血非依存や赤血球反応、ヘモグロビン値上昇の期間を延長することから、本試験の対象患者に有用な臨床効果をもたらすことが示唆される」としている。
(医学ライター 菅野 守)