皮膚がんの診断、スマホアプリは信頼できるか/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2020/02/26

 

 現在のアルゴリズムベースのスマートフォンアプリケーション(アプリ)は、悪性黒色腫や他の皮膚がん患者の検出において信頼性がなく、実際には研究結果よりもさらに検査性能が劣る可能性があることが、英国・バーミンガム大学のKaroline Freeman氏らの調査で明らかとなった。研究の詳細は、BMJ誌2020年2月10日号に掲載された。皮膚がんは世界で最も頻度の高いがんの1つであり、罹患率は上昇している。アルゴリズムベースのスマートフォンアプリは、皮膚がんリスクを即時に評価し、より早期に発見して治療することで、生存の延長をもたらすと期待される。一方、これらのアプリの妥当性を検証した2つの研究に関するコクランレビューでは、皮膚がんを見逃す可能性が高いと示唆されている。

診断精度研究の系統的レビュー

 研究グループは、がんが疑われる皮膚病変の皮膚がんリスクを評価するアルゴリズムベースのスマートフォンアプリの精度を評価した研究の妥当性を検証する目的で、診断精度研究の系統的レビューを行った(英国国立衛生研究所[NIHR]などの助成による)。

 2019年4月10日現在、医学データベースとインターネット上の臨床試験レジストリに登録された文献を検索した。対象は、皮膚がんが疑われる皮膚病変の画像を評価するアルゴリズムベースのスマートフォンアプリについて検討したあらゆるデザインの研究とした。

 解析には、評価した病変が皮膚がんか否かの決定を、アプリの判定をマスクした状態で、病変を切除した場合は組織学的診断で、切除しなかった場合はフォローアップで確定した試験、および専門家による推奨で検証するために、アプリで評価したすべての病変を皮膚科専門医が直接再評価した試験が含まれた。

 2人の研究者が、別個にデータを抽出し、QUADAS-2(Quality Assessment of Diagnostic Accuracy Studies 2 tool)を用いて妥当性の評価を行った。個々のアプリの感度と特異度を算出した。

多くの試験で、病変選択や画像取得は主に医師

 6種のスマートフォンアプリ(SkinScan、SkinVision、Dr Mole、SpotMole、MelApp、Mole Detective)を評価した9件の研究が解析の対象となった。6件(725病変)の研究は組織病理学的な参照基準による診断またはフォローアップで、3件(407病変)は専門医の推奨を用いて結果を検証していた。

 6種のアプリのうち、解析の時点で使用可能であったのは2種(SkinScan、SkinVision)のみであった。また、2件の試験はアプリ名を開示していなかった(1件は1種のアプリ、1件は3種のアプリを評価)。

 すべての研究は小規模で、参加者を選択的に登録したり、評価不能な画像の割合が高いなど、方法論的質が不良であった。患者選択のバイアスが低リスクと判定されたのは2件の研究のみだった。また、病変の選択(5件が医師、2件が参加者、2件は報告なし)や、画像の取得(9件すべてが医師)は、スマートフォン使用者ではなく、主に医師によって行われていた。

 SkinScanは1件の研究(15病変、5病変で悪性黒色腫を検出)で検討されており、悪性黒色腫を検出する感度は0%(95%信頼区間[CI]:0~52)、特異度は100%(69~100)であった。

 また、SkinVisionは2件の研究(252病変、61病変でがん病変または前がん病変を検出)で検討され、がん病変または前がん病変を検出する感度は80%(95%CI:63~92)、特異度は78%(67~87)であった(病変の特徴や症状に関するアプリ内の質問に回答した患者を含む)。

 著者は、「皮膚病変を懸念する成人の皮膚がんリスクの評価において、これらのアプリの使用を支持するエビデンスの質は低い。また、臨床的に適切な集団で、本来のアプリ使用者が操作した場合、ここで報告した結果よりも検査性能が劣る可能性がある」としている。

(医学ライター 菅野 守)