糖尿病(DM)の有無にかかわらず左室駆出率(LVEF)が低下した心不全(HFrEF)患者において、推奨治療へのダパグリフロジンの追加はプラセボと比較し、糖尿病の状態とは関係なく心不全増悪または心血管死のリスクを有意に低下させることが認められた。英国・グラスゴー大学のMark C. Petrie氏らが、20ヵ国410施設で実施した無作為化二重盲検第III相試験「DAPA-HF試験」の探索的解析結果を報告した。HFrEFに対する新たな治療が必要とされている中、選択的ナトリウム・グルコース共役輸送体2(SGLT2)阻害薬は、非DM患者であってもHFrEFに対する治療薬として有効である可能性が示唆されていた。JAMA誌オンライン版2020年3月27日号掲載の報告。
ダパグリフロジンの有効性を、2型DMの状態別にサブグループ解析
研究グループは2017年2月15日~2018年8月17日の期間で、LVEF≦40%、NT-pro-BNP≧600pg/mL、NYHA心機能分類II~IVのHFrEF患者を登録し、ダパグリフロジン(10mg 1日1回)群またはプラセボ群に無作為化に割り付け、それぞれ推奨された治療に追加投与した。
主要評価項目は、心不全の悪化(入院または静脈投与による治療を要する救急受診)または心血管死の複合エンドポイントとして、ベースラインで2型DMの有無別に評価し、非2型DM患者においてはHbA1c値5.7%未満と5.7%以上に分けて評価した。
2型DMの有無を問わずダパグリフロジンで心不全増悪/心血管死リスク低下
HFrEF患者4,744例(平均年齢66歳、女性1,109例[23%]、非2型DM患者2,605例[55%])が無作為化され、このうち4,742例が試験を完遂した。
主要評価項目である心不全の悪化/心血管死は、非2型DM患者ではダパグリフロジン群で13.2%(171/1,298例)、プラセボ群で17.7%(231/1,307例)に認められ(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.60~0.88)、2型DM患者ではそれぞれ20.0%(215/1,075例)および25.5%(271/1,064例)に認められた(HR:0.75、95%CI:0.63~0.90)(交互作用のp=0.80)。
また、非2型DM患者において主要評価項目のイベント発現率は、HbA1c値5.7%未満の患者では、ダパグリフロジン群12.1%(53/438例)、プラセボ群16.9%(71/419例)(HR:0.67、95%CI:0.47~0.96)であった。同5.7%以上の患者ではそれぞれ13.7%(118/860例)、18.0%(160/888例)(HR:0.74、95%CI:0.59~0.94)であった(交互作用のp=0.72)。
体液量減少の有害事象が、非2型DM患者ではダパグリフロジン群7.3%、プラセボ群6.1%で、2型DM患者では両群とも7.8%で報告された。また、腎臓の有害事象の発現率は、非2型DM患者でダパグリフロジン群4.8%、プラセボ群6.0%であり、2型DM患者でそれぞれ8.5%、8.7%であった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)