駆出率(EF)が低下した心不全患者に対し、標準治療に加えたSGLT2阻害薬ダパグリフロジンの投与は、糖尿病の有無にかかわらず、心不全増悪および心血管死のリスクを有意に低下することが示された。英国・グラスゴー大学のJohn J. V. McMurray氏らが、 4,744例の患者を対象に行った第III相プラセボ対照無作為化試験で明らかにした。2型糖尿病(DM)患者では、SGLT2阻害薬が心不全の初発入院リスクを低下することが示されている。その機序はグルコースとは独立していると考えられており、研究グループは、2型DMの有無を問わず、EF低下心不全患者におけるSGLT2阻害薬の作用に関するデータを集めるため本試験を行った。NEJM誌オンライン版2019年9月19日号掲載の報告。
心不全増悪または心血管死を比較
研究グループは、NYHA心機能分類II~IVでEFが40%以下の心不全患者4,744例を対象に試験を行った。
被験者を無作為に2群に分け、一方にはダパグリフロジン(1日1回10mg)を、もう一方にはプラセボを、推奨されている治療に加えて投与した。
主要アウトカムは、心不全増悪(心不全の静注療法を要する入院もしくは緊急受診)または心血管死の複合だった。
心不全増悪の初回発生リスク、ダパグリフロジン群で3割減
追跡期間中央値18.2ヵ月において、主要アウトカムの発生は、プラセボ群502/2,371例(21.2%)に対し、ダパグリフロジン群は386/2,373例(16.3%)だった(ハザード比[HR]:0.74、95%信頼区間[CI]:0.65~0.85、p<0.001)。
初発の心不全増悪は、プラセボ群326例(13.7%)、ダパグリフロジン群237例(10.0%)だった(HR:0.70、95%CI:0.59~0.83)。心血管死はそれぞれ273例(11.5%)、227例(9.6%)で(同:0.82、0.69~0.98)、全死因死亡は329例(13.9%)、276例(11.6%)だった(同:0.83、0.71~0.97)。
糖尿病の有無による所見の違いはみられなかった。循環血液量減少や腎機能不全、低血糖に関連した有害事象の発現頻度も、両群間で差はなかった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)