早期乳がん術後放射線療法、26Gy/5回/1週が有用か/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2020/05/13

 

 早期乳がんの初回手術後の局所放射線療法では、5年後の局所コントロールおよび正常組織への影響に関する安全性について、総線量26Gyの5分割1週間照射は、標準的な40Gyの15分割3週間照射に対し非劣性であることが、英国・ノースミッドランズ大学病院のAdrian Murray Brunt氏らの「FAST-Forward試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年4月28日号に掲載された。早期乳がんの術後放射線療法は、従来、1.8~2.0Gy/日を週5日間、5週間以上照射する方法が標準であったが、カナダや英国、次いで中国とデンマークの無作為化第III相試験により、2.7Gy/日の15または16分割照射の安全性と有効性が示されている。さらに、最近では、5分割の1週間照射の長期アウトカムが報告され、早期乳がんにおける根治的放射線療法のいっそうの簡便化の可能性が示唆されている。

再発率を比較する英国の無作為化非劣性試験

 本研究は、英国の97施設(放射線センター47施設、紹介先病院50施設)が参加した非盲検無作為化第III相非劣性試験であり、2011年11月~2014年6月の期間に患者登録が行われた(英国国立衛生研究所[NIHR]医療技術評価プログラムの助成による)。

 対象は、年齢18歳以上の男女で、浸潤性乳がん(pT1~3、pN0~1、M0)に対して、乳房温存術または乳房切除術(乳房再建術も可)を受けた患者であった。

 被験者は、次の3群に1対1対1の割合で無作為に割り付けられ、全乳房と胸壁への照射が行われた。1)総線量40Gy/15分割(1回2.67Gy)/3週間、2)総線量27Gy/5分割(1回5.4Gy)/1週間、3)総線量26Gy/5分割(1回5.2Gy)/1週間。

 主要エンドポイントは同側乳房の腫瘍再発とし、同側乳腺、皮膚、切除後の胸壁に発生した浸潤性乳がんまたは非浸潤性乳管がん(DCIS)と定義された。40Gy照射で主要エンドポイントが5年間で2%に発生すると推定し、5分割スケジュールの5年発生率の増加が1.6%を超えない場合に非劣性と判定することとした。また、正常組織への影響を、医師と患者が評価し、写真を用いた評価も行った。

5年再発率:2.1% vs.1.7% vs.1.4%

 4,096例が登録され、40Gy群に1,361例(年齢中央値60歳[IQR:53~66、範囲:29~89]、男性6例[0.4%])、27Gy群に1,367例(61歳[53~67、25~90]、2例[0.1%])、26Gy群に1,368例(61歳[52~66、25~89]、4例[0.3%])が割り付けられた。

 フォローアップ期間中央値71.5ヵ月(IQR:71.3~71.7)の時点で、同側乳がん再発は79例(40Gy群31例、27Gy群27例、26Gy群21例)に認められた。40Gy群との比較におけるハザード比(HR)は、27Gy群が0.86(95%信頼区間[CI]:0.51~1.44)、26Gy群は0.67(0.38~1.16)であった。

 40Gy群の5年同側乳がん再発率は2.1%(95%CI:1.4~3.1)であり(予測された再発率は2%)、27Gy群は1.7%(1.2~2.6)、26Gy群は1.4%(0.9~2.2)であった。40Gy群と27Gy群との推定絶対差は-0.3%(-1.0~0.9)(非劣性:p=0.0022)、26Gy群との推定絶対差は-0.7%(-1.3~0.3)(非劣性:p=0.00019)であった。これらの上限信頼限界は、27Gy群と26Gy群は40Gy群と比較して、同側乳がんの再発率が1.6%を超えて増加しないことを示しており、2つの5分割スケジュールの40Gy/15分割に対する非劣性が確かめられた。

 局所領域再発、遠隔再発、無病生存、全生存は、3群で類似しており、有意な差は認められなかった。

 5年後の時点で、医師評価による乳房と胸壁の正常組織への中等度~著明な影響は、40Gy群が986例中98例(9.9%)、27Gy群は1,005例中155例(15.4%)、26Gy群は1,020例中121例(11.9%)で報告された。40Gy群と27Gy群の間には有意差がみられた(p=0.0003)が、40Gy群と26Gy群には有意な差はなかった(p=0.17)。

 1~5年の期間における、医師評価による乳房と胸壁の正常組織への中等度~著明な晩発性の影響(萎縮、硬化、毛細血管拡張症、浮腫)のリスクに関して、40Gy群と比較したオッズ比(OR)は、27Gy群が1.55(95%CI:1.32~1.83、p<0.0001)と有意に増加したが、26Gy群は1.12(0.94~1.34、p=0.20)であり、有意な差はみられなかった。また、患者および写真による正常組織への晩発性の影響の評価では、40Gy群に比べ27Gy群はリスクが高かったが、26Gy群は高くなかった。

 著者は、「本試験と以前の寡分割照射の試験の一貫した結果は、部分または全乳房への術後放射線療法を要する切除可能な乳がん女性の新たな標準治療として、総線量26Gyの5日間分割照射の選択を支持する」としている。

(医学ライター 菅野 守)