全粒穀物およびいくつかの全粒食品(全粒朝食用シリアル、オートミール、ライ麦パン、玄米、ふすま入り、小麦胚芽など)の摂取量が多いほど2型糖尿病のリスクは有意に低下することが示された。米国・ハーバード公衆衛生大学院のYang Hu氏らが、3つの前向きコホート試験(米国看護師健康調査[NHS]、看護師健康調査II[NHS II]、医療従事者追跡調査)のデータを分析し明らかにしたもので、BMJ誌2020年7月8日号で発表した。これまで、全粒穀物摂取と2型糖尿病のリスク低下との関連は一貫していることが認められていたが、個々の全粒食品摂取との関連はあまり検討されていなかった。
男女合わせて約19万5,000人を調査
研究グループは、NHS(1984~2014年)、NHS II(1991~2017年)、医療従事者追跡調査(1986~2016年)の参加者を対象に、全粒穀物の摂取量と、2型糖尿病発症の関連を検証した。
対象被験者は、ベースラインで2型糖尿病や心血管疾患、がんの既往がない、女性15万8,259人と男性3万6,525人。主要評価項目は、追跡アンケート調査時および検証済みの補足アンケート調査で確認された自己申告の2型糖尿病発症とした。
身体活動レベルや喫煙の有無にかかわらずリスクは低下
延べ追跡期間461万8,796人年の間に、1万8,629人が2型糖尿病を発症した。全粒穀物の1日総摂取量について、3つのコホートをそれぞれ5つのグループに等分し、2型糖尿病発症との関連を分析した。
糖尿病のリスク因子となるライフスタイルや食事内容で補正後、全粒穀物摂取量の最大五分位群は、最少五分位群に比べ、2型糖尿病リスクが29%(95%信頼区間[CI]:26~33)低かった。
全粒食品の種類別にみると、コールド全粒朝食用シリアルについて1日に1サービング以上摂取群は1ヵ月1サービング未満群に比べ2型糖尿病発症に関する統合ハザード比(HR)は、0.81(95%CI:0.77~0.86)だった。ライ麦パンの同HRは0.79(0.75~0.83)、一方でポップコーン摂取の同HRは1.08(1.00~1.17)だった。
摂取量が平均して少ないその他の全粒食品について、1週間に2サービング以上摂取群は1ヵ月に1サービング未満群に比べて同統合ハザード比は、オートミールが0.79(95%CI:0.75~0.83)、玄米は0.88(0.82~0.94)、ふすま入り食品は0.85(0.80~0.90)、小麦胚芽は0.88(0.78~0.98)だった。
スプライン回帰分析の結果、全粒穀物摂取量と2型糖尿病リスクには、非線形用量反応関係がみられ、同リスク減少の最大水準は1日2サービング超だった(曲率に関するp<0.001)。また、コールド全粒朝食用シリアルとライ麦パンでは、割合低下は1日約0.5サービングでプラトーに達した。ポップコーンの摂取についてはJカーブの関連性が認められ、その摂取量が1日1サービングを超えるまでは2型糖尿病率の有意な上昇はみられなかった。
全粒穀物摂取量の増加と2型糖尿病リスク減少の関連性は、痩せている人のほうが、過体重または肥満者に比べ強かった(相互作用に関するp=0.003)。同関連性は、身体活動レベルや糖尿病家族歴、喫煙の有無にかかわらず認められた。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)