再発・難治性多発性骨髄腫患者の治療において、プロテアソーム阻害薬カルフィルゾミブ+デキサメタゾン+抗CD38モノクローナル抗体製剤ダラツムマブ(KdD)による3剤併用療法は、カルフィルゾミブ+デキサメタゾン(Kd)に比べ、無増悪生存(PFS)期間を有意に延長し、ベネフィット・リスクのプロファイルも良好であることが、ギリシャ・アテネ大学のMeletios Dimopoulos氏らが実施した「CANDOR試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2020年7月18日号に掲載された。新規に診断された多発性骨髄腫の治療では、レナリドミド+ボルテゾミブにより生存期間が改善されているが、多くの患者は病勢の進行または毒性により治療中止に至るため、再発・難治性多発性骨髄腫における新たな治療法の必要性が高まっている。カルフィルゾミブ+ダラツムマブは、第I相試験(MMY1001試験)において再発・難治性多発性骨髄腫に対する実質的な有効性と忍容可能な安全性が報告されている。
ダラツムマブ併用の有用性を評価する無作為化第III相試験
研究グループは、再発・難治性多発性骨髄腫の治療におけるKdDとKdの有効性と安全性を比較する目的で、非盲検無作為化第III相試験を行った(Amgenの助成による)。
対象は、北米、欧州、オーストラリア、アジアの102施設から登録された1~3レジメンの前治療を受けた再発・難治性多発性骨髄腫患者であった。被験者は、KdDまたはKdによる治療を受ける群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。
主要評価項目は、intention to treat集団におけるPFSであった。
1年後のCRかつMRD陰性の割合:13% vs.1%
2017年6月13日~2018年6月25日の期間に466例が登録され、KdD群に312例(年齢中央値64.0歳、女性43%)、Kd群には154例(64.5歳、41%)が割り付けられた。前治療ライン数中央値は両群とも2.0で、2ライン以上の患者の割合は両群とも54%であった。KdD群で、造血幹細胞移植歴(63% vs.49%)のある患者が多く、75歳以上(9% vs.14%)の患者が少なかった。
全体の42%がレナリドミドを含むレジメン、90%はボルテゾミブを含むレジメンの投与歴があり、33%がレナリドミド抵抗性、29%はボルテゾミブ抵抗性だった。
フォローアップ期間中央値が約17ヵ月の時点でのPFS期間中央値は、KdD群が未到達、Kd群は15.8ヵ月であり、KdD群で有意に延長していた(ハザード比[HR]:0.63、95%信頼区間[CI]:0.46~0.85、p=0.0027)。18ヵ月PFS率は、KdD群が62%、Kd群は43%だった。事前に規定されたすべてのサブグループで一貫して、KdD群においてPFSのベネフィットが認められた。
全奏効割合は、KdD群が84%と、Kd群の75%に比べ有意に高く(オッズ比[OR]:1.925、95%CI:1.2~3.1、p=0.0080)、非常によい部分奏効(VGPR)以上の達成割合はそれぞれ69%および49%であり、完全奏効(CR)の達成割合は29%および10%であった。また、12ヵ月時の微小残存病変(MRD)陰性割合は、KdD群が18%、Kd群は4%であり(5.8、2.4~14.0、p<0.0001)、12ヵ月時のCR+MRD陰性の割合は、それぞれ13%および1%(11.3、2.7~47.5、p<0.0001)だった。
全生存(OS)期間中央値は、両群とも未到達であり、18ヵ月OS率は、KdD群が80%、Kd群は74%だった。治療期間中央値は、KdD群が70.1週と、Kd群の40.3週に比べ長かった。
Grade3以上の有害事象は、KdD群が82%、Kd群は74%で発現し、重篤な有害事象はそれぞれ56%および46%にみられた。全Gradeの有害事象で、KdD群で頻度の高いものとして、血小板減少症(37% vs.29%)、下痢(31% vs.14%)、上気道感染症(29% vs.23%)、疲労感(24% vs.18%)が認められた。
Grade3以上の注目すべき有害事象として、気道感染症(KdD群29% vs.Kd群16%)、心不全(4% vs.8%)、急性腎不全(3% vs.7%)、虚血性心疾患(3% vs.3%)、ウイルス感染症(6% vs.2%)などが認められた。治療中止の原因となった有害事象は、KdD群が22%、Kd群は25%にみられた。
著者は、「カルフィルゾミブ+デキサメタゾン+ダラツムマブによる3剤併用療法は、レナリドミド曝露歴のある患者やレナリドミド抵抗性の患者を含め、再発・難治性多発性骨髄腫の治療における有効かつ忍容可能な新たな治療選択肢として検討を進める必要がある」としている。
(医学ライター 菅野 守)