コロンビアでは、2015~16年にジカウイルス感染症(ZVD)のアウトブレイクが発生した。コロンビア・Instituto Nacional de SaludのMartha L. Ospina氏らは、同国内のサーベイランスシステムのデータを用い、ZVDのアウトブレイクが妊娠アウトカムに与えた影響について分析し、乳児/胎児の脳・眼障害有病率はアウトブレイク期間中のほうがアウトブレイク直前や発生後より高く、ジカウイルスRNA検査で陽性が確認された妊婦における乳児/胎児の脳・眼障害有病率は妊娠初期のZVD発症で増加したことを報告した。NEJM誌2020年8月6日号掲載の報告。
ジカウイルス感染症を発症した妊婦約1万8,000例について調査
研究グループは、2015年6月~2016年7月に報告された、ZVDの臨床症状を有する妊婦に関する全国的なサーベイランスデータを収集した。これら妊婦のサブグループでは、リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応法(rRT-PCR)によるジカウイルスRNA検査が行われた。
検査でジカウイルスRNAが確認され、妊娠アウトカムに関するデータを入手できた妊婦について、乳児/胎児における脳または眼の異常と他の有害な妊娠アウトカムについて検討した。
また、アウトブレイク中の2015年9月~2017年4月における全国的な乳児/胎児の脳・眼障害有病率を、アウトブレイク期間前後(2014年および2018年)の有病率と比較した。
調査期間にZVDを発症した妊婦は1万8,117例で、このうち8,215例がrRT-PCR検査を受け、5,926例(33%)がジカウイルス陽性であった。
乳児/胎児の脳・眼障害を2%に認め、妊娠初期の感染で高率
ジカウイルス陽性が確認され、ZVD発症時の妊娠期間や妊娠転帰が報告された5,673例において、乳児/胎児93例(2%)に脳・眼障害が認められ、生児は75例であった。脳・眼障害の発生率は、ZVDを妊娠第1期で発症した妊婦のほうが、第2期または第3期に発症した妊婦よりも高かった(3% vs.1%)。
妊婦5,673例中172例(3%)が妊娠喪失に至った。先天異常が認められた妊娠を除外した5,426例では、409例(8%)が早産、333例(6%)が低出生体重であった。
全国における脳・眼障害有病率(妊娠中のZVDの有無を問わない)は、アウトブレイク期間中が13例/出生1万人であったのに対し、アウトブレイク前は8例/出生1万人、アウトブレイク後は11例/出生1万人であった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)