卵巣腫瘍の悪性度診断に最適な予測モデルは?/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2020/08/17

 

 卵巣腫瘍で手術または保存療法を受けた患者における診断予測モデルを検証した結果、ADNEXモデルとSRRiskが、腫瘍が良性か悪性かを識別する最適なモデルであることが、ベルギー・ルーヴェン・カトリック大学のBen Van Calster氏らによる検討で明らかにされた。卵巣腫瘍では最適な治療を選択するため、悪性度を予測するモデルが必要になる。既存の予測モデルは手術を受けた患者のデータのみに基づいており、モデルの検証も大半が手術を受けた患者のデータを使用したもので、キャリブレーションや臨床的有用性の評価はほとんど行われていないという。BMJ誌2020年7月30日号掲載の報告。

手術または保存療法を受けた患者を対象に6つのモデルについて検証

 研究グループは、卵巣腫瘍で手術または保存療法を受けた全患者において、悪性度に関する診断予測モデルのパフォーマンス評価を目的とする多施設コホート試験を行った。

 検証したモデルは、1990年に開発され最もよく使用されている「RMI(risk of malignancy index)」と、その後に開発された「IOTA(International Ovarian Tumour Analysis)モデル」のLR2(logistic regression model 2)、simple rules、SRRisk(simple rules risk model)、ADNEX(assessment of different neoplasias in the adnexa)モデルで、ADNEXモデルについては腫瘍マーカーのCA125の測定有無を加味して評価した。ADNEXモデルでは、悪性腫瘍のリスクの細分化(StageIの原発性、StageII~IVの原発性、2次性の転移がん)が可能であった。

 Calster氏らの検討は、IOTAモデルについて検証した試験「IOTAフェーズ5試験(IOTA5)」の中間解析データを用いて行われた。試験は、14ヵ国36ヵ所のがん紹介治療センター(特定の婦人科腫瘍ユニットがある3次医療センター)またはその他のタイプの医療センターにおいて、2012年1月~2015年3月に卵巣腫瘍で受診し、手術またはフォローアップを受けた連続成人患者を対象とした。

 主要アウトカムは、上記6つのモデルについて、全体および施設別の識別度、キャリブレーションおよび臨床的有用性。アウトカムは、患者が手術を受けた場合は組織学的評価に基づくものとし、保存療法の場合は12ヵ月時点での臨床的および超音波評価のフォローアップの結果に基づくものとした。フォローアップに基づくアウトカムが不確かな場合は複数の評価が用いられた。

ADNEXモデル、SRRiskが最も優れる

 主要解析には、手術およびフォローアップデータについて厳格な質的基準を満たした17ヵ所の被験者データ(全患者8,519例のうち5,717例)が包含された。そのうち812例(14%)が、試験登録時にすでにフォローアップを受けており、解析には4,905例が包含された。

 アウトカムが良性であった患者は3,441例(70%)、悪性は978例(20%)。残りはアウトカムが不確かで(486例、10%)、大半はフォローアップの情報が限定的だったことによる。

 全体でROC曲線下面積が最も高値だったのはADNEX(CA125あり)モデル(0.94、95%信頼区間[CI]:0.92~0.96)、ADNEX(CA125なし)モデル(0.94、0.91~0.95)、SRRisk(0.94、0.91~0.95)で、最も低値だったのはRMIだった(0.89、0.85~0.92)。

 キャリブレーションはすべてのモデルについて施設間のばらつきが大きかったが、その中でADNEXモデルとSRRiskのキャリブレーションは最も優れていた。腫瘍サブタイプの推定リスクのキャリブレーションは、CA125が予測因子として含まれていたか否かにかかわらずADNEXは優れていた。また、臨床的有用性(ネットベネフィット)もADNEXモデルとSRRiskが最も高く、RMIが最も低かった。

 1回以上フォローアップの超音波評価を受けた患者(1,958例)において、全体のROC曲線下面積は、RMIの0.76(95%CI:0.66~0.84)からADNEX(CA125あり)の0.89(0.81~0.94)に、ばらつきの範囲がわたっていた。

(ケアネット)