ICDの合併症+不適切ショック、皮下vs.経静脈/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2020/08/19

 

 植込み型除細動器(ICD)の適応があり、ペーシングの適応のない患者において、皮下ICDは従来の経静脈ICDに対し、デバイス関連合併症と不適切ショック作動の発生に関して非劣性であることが、オランダ・アムステルダム大学のReinoud E. Knops氏らが行った「PRAETORIAN試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年8月6日号に掲載された。皮下ICDは、完全に胸腔外に留置することで、経静脈ICDでみられるリード関連合併症(気胸、心穿孔など)を回避するように設計されている。欧米のガイドラインでは、徐脈へのペーシングや心臓再同期療法、抗頻拍ペーシングの適応のない患者における皮下ICDの推奨は、主に観察研究のエビデンスに基づいているという。

欧米の39施設が参加した無作為化非劣性試験

 本研究は、欧米の39施設が参加した無作為化非劣性試験であり、2011年3月~2017年1月の期間に患者登録が行われた(Boston Scientificの助成による)。

 対象は、年齢18歳以上、欧州または米国のガイドラインで、1次または2次予防においてICD療法が適応とされ、ペーシングの適応はない患者であった。

 被験者は、皮下ICDまたは経静脈ICDを植え込む群に無作為に割り付けられた。患者は、植込み術から4ヵ月以内にフォローアップのために受診した。その後は、年2回以上のデバイスの検査が行われ、患者は年1回以上外来を受診した。

 主要エンドポイントは、デバイス関連合併症(感染症、出血、塞栓症イベント、気胸、リード穿孔、心タンポナーデ、リード再留置など)と不適切ショック作動の複合であり、ハザード比(皮下ICD vs.経静脈ICD)の95%信頼区間(CI)上限1.45を非劣性マージンとした。また、非劣性が確認された場合に優越性解析を行うこととした。副次エンドポイントは、死亡および適切ショック作動などであった。

主要エンドポイント:15.1% vs.15.7%

 849例が解析の対象となり、皮下ICD群が426例、経静脈ICD群は423例であった。全体の年齢中央値は63歳(IQR:55~70)、女性は19.7%であった。69.1%が虚血性心筋症で、左室駆出率中央値は30%だった。

 フォローアップ期間中央値49.1ヵ月の時点における主要エンドポイントのイベント発生は、皮下ICD群が68例、経静脈ICD群も68例で認められ、皮下ICD群の経静脈ICD群に対する非劣性が確認されたが、優越性は示されなかった(Kaplan-Meier法による48ヵ月累積発生率:皮下ICD群15.1% vs.経静脈ICD群15.7%、ハザード比[HR]:0.99、95%信頼区間[CI]:0.71~1.39、非劣性のp=0.01、優越性のp=0.95)。

 デバイス関連合併症は、皮下ICD群が31例(5.9%)、経静脈ICD群は44例(9.8%)で発生した(HR:0.69、95%CI:0.44~1.09)。また、不適切ショック作動は、それぞれ41例(9.7%)および29例(7.3%)で発生した(1.43、0.89~2.30)。

 死亡は、皮下ICD群が83例(16.4%)、経静脈ICD群は68例(13.1%)で発生した(HR:1.23,95%CI:0.89~1.70)。また、適切ショック作動は皮下ICD群が83例(19.2%)で認められ、経静脈ICD群の57例(11.5%)よりも頻度が高かった(1.52、1.08~2.12)。

 著者は、「デバイス関連合併症と不適切ショック作動のどちらの負担が大きいかは、医師と患者で見解が異なる可能性がある。合併症が主に身体的苦痛と関連するのに対し、ICDショックは深刻な心理的影響を及ぼす可能性がある」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 香坂 俊( こうさか しゅん ) 氏

慶應義塾大学 循環器内科 准教授

J-CLEAR評議員

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