左心室中隔ペーシングは両心室ペーシングと比べ有用か【Dr.河田pick up】

提供元:ケアネット

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公開日:2020/03/30

 

 心臓再同期療法(CRT)が導入されて20年以上経過したが、心室収縮能が改善しないノンレスポンダーは3割以上にもなり、CRTに代わるペーシングが試みられている。この論文では、オランダ・マーストリヒト大学のSalden氏ら研究グループが、大動脈経由による左心室中隔ペーシングの有効性を検討している。Journal of the American College of Cardiology誌2020年2月号に掲載。

 CRTは、多くの場合、両心室ペーシングによって行われる。一方、左心室心内膜側から心室中隔への経動脈的なペーシングリード留置は以前から試みられており、左心室中隔ペーシングと呼ばれる。本研究で著者らは、左心室中隔ペーシングと両心室ペーシングについて、電気生理学的変化および血行動態への影響を比較した。

CRT実施の27例を4群に分け、ペーシングの有効性を検討

 本研究では、CRTの植込みを受けた患者27例について、一時的な左心室中隔ペーシングのみ、もしくは左心室中隔ペーシングと右心室ペーシングの組み合わせ、両心室ペーシング、ヒス束ペーシングの4群に分け、各々を検討した。電気生理学的変化は心電図(QRS幅)、3次元ベクトル心電図(QRS面積)、および多極体表面マッピング(心室活動時間の標準偏差、standard deviation of activation times [SDAT])によって評価した。血行動態の変化は、左室圧の増加率の最高値(LVdP/dtmax)によって評価した。

左心室中隔ペーシングはQRS面積や活動時間を短縮

 ベースラインと比較して、左室中隔ペーシング群では、QRS面積の減少(to 73± 22μVs)とSDATの減少(to 26±7ms)が両心室ペーシング群 (to 93±26μVsおよび31±7ms、ともにp<0.05) や左心室中隔+右室ペーシング群(to 108±37μVs、p<0.05および29±8ms、p=0.05)よりも大きかった。LVdP/dtmaxの増加に関しては、左心室中隔ペーシング群は両心室ペーシング群と同様であり(それぞれ17±10% vs.17±9%)、左心室中隔+右室ペーシング群よりも大きかった(11±9%、p<0.05)。LVdP/dtmaxとSDATについては、左心室の基部、中間部、心尖部で有意な違いは認められなかった。16例のサブグループでは、QRS面積、SDATとLVdP/dtmaxについて、左心室中隔ペーシング群およびヒス束ペーシング群で比較した。

 左心室中隔ペーシングは、短期間の血行動態を改善し、両心室ペーシングと同程度の電気的再同期が得られた。また、ヒス束ペーシングと比べても同等の改善が得られる可能性を示した。この結果から著者らは、左心室中隔ペーシングが両心室ペーシングの有用な代替法となりうるとしている。

 長期的な心室機能への効果に対しては、今後さらなる検討が必要だと考えられる。経動脈的なペーシングリードは、左室内血栓を起こす可能性があるため、実用的ではなかった。しかしながら、心室内に埋め込むことが可能なリードレスペースメーカーも開発されており、今後の臨床への応用が期待される。

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(Oregon Heart and Vascular Institute 河田 宏)