近視の小児では、高加入度数の多焦点コンタクトレンズを用いた3年間の治療により、中加入度数の多焦点コンタクトレンズや単焦点コンタクトレンズと比較して、近視の進行が緩徐化され、眼軸長伸展が抑制されることが、米国・オハイオ州立大学のJeffrey J. Walline氏らが行ったBLINK試験で示された。研究の成果はJAMA誌2020年8月11日号に掲載された。2016年の報告では、世界の近視の有病率は、2000年からの50年間に23%から54%に、高度な近視の有病率は3%から10%にまで増加すると推定されている。また、近視は、視力を脅かす合併症(白内障、網膜剥離、緑内障、脈絡膜萎縮症など)と関連するが、その進行を緩徐化することで、これらの合併症のリスクが低減する可能性があるという。
近視の進行を3群で比較する無作為化試験
研究グループは、ソフト系多焦点コンタクトレンズは小児の近視の進行を緩徐化するか、また高加入度数(+2.50D)のコンタクトレンズは中加入度数(+1.50D)のレンズに比べ近視の進行を遅延するかを検証する目的で、無作為化臨床試験を実施した(米国国立衛生研究所[NIH]の助成による)。
オハイオ州コロンバス市とテキサス州ヒューストン市の2つの検眼専門学校が参加し、2014年9月~2016年6月の期間に参加者の登録が行われた。対象は、年齢7~11歳で、-0.75D~-5.00Dの近視および1.00D未満の乱視の小児であった。参加者は、高加入度数(+2.50D)、中加入度数(+1.50D)、単焦点のコンタクトレンズのいずれかを装着する群に、無作為に割り付けられた。
主要アウトカムは、麻痺下等価球面屈折度数の3年間の変化(近視の進行)とした。副次アウトカムは11項目で、今回はこのうち4項目(眼軸長伸展[眼球の前後径の拡張]、視力、有害事象、アドヒアランス)の解析が行われた。
有害事象の頻度は3群間に差はない
294例(3群とも98例ずつ)が登録され、292例(99%)が解析に含まれた。ベースラインの平均年齢は10.3(SD 1.2)歳、177例(60.2%)が女児で、等価球面屈折度数の平均値は-2.39(SD 1.00)Dであった。
補正後の3年間の近視進行は、高加入度数群が-0.60D、中加入度数群が-0.89D、単焦点群が-1.05Dであった。近視進行の差は、高加入度数群と単焦点群が0.46D(95%信頼区間[CI]:0.29~0.63、p<0.001)、高加入度数群と中加入度数群が0.30D(0.13~0.47、p=0.004)、中加入度数群と単焦点群は0.16D(-0.01~0.33、p=0.19)であり、高加入度数群が他の2群に比べ良好だった。
4つの副次アウトカムのうち、眼軸長伸展を除く3項目には、3群間に有意な差は認められなかった。補正後の平均眼軸長伸展は、高加入度数群が0.42mm、中加入度数群が0.58mm、単焦点群は0.66mmであった。眼軸長伸展の差は、高加入度数群と単焦点群が-0.23mm(95%CI:-0.30~-0.17、p<0.001)、高加入度数群と中加入度数群が-0.16mm(-0.23~-0.09、p<0.001)、中加入度数群と単焦点群は-0.07mm(-0.14~-0.01、p=0.09)であり、高加入度数群は他の2群よりも伸展が抑制されていた。
目に関する重篤または重度の有害事象や、コンタクトレンズの装着中止の原因となる有害事象の報告はなかった。最も頻度の高い有害事象は、巨大乳頭結膜炎(9例)、浸潤性角膜炎(8例)、眼アレルギー(7例)であった。有害事象の頻度に、3群間で有意な差はなかった(p=0.41)。
著者は、「これらの差の臨床的重要性を理解するには、さらなる研究を要する」としている。
(医学ライター 菅野 守)