米国の成人発症がんの生存者は一般集団と比較して、いくつかの種類の原発がんで、2次原発がん(SPC)の発症およびSPCによる死亡のリスクが高く、喫煙または肥満に関連する一部のSPCは、がん生存者全体におけるSPC罹患およびSPCによる死亡に占める割合が高いことが、米国がん協会(ACS)のHyuna Sung氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2020年12月22・29日号に掲載された。新たながんを発症するがん生存者の数は増加すると予測されている。一方、成人発症がんの生存者におけるSPCのリスクに関して、包括的なデータは十分でないという。
SEERの12のレジストリデータを用いた後ろ向きコホート研究
研究グループは、成人発症がんの生存者における全体およびがん種別のSPCリスクを、1次原発がん(FPC)の種別および性別で定量的に評価することを目的に、後ろ向きコホート研究を行った(ACSの助成による)。
解析には、米国のSurveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)の12のレジストリのデータを用いた。対象は、1992~2011年の期間に年齢20~84歳でFPCと診断され(2017年12月31日まで追跡)、5年以上生存した患者であった。
主要アウトカムは1万人年当たりのSPC罹患およびSPCによる死亡とし、標準化罹患比(SIR)と標準化死亡比(SMR)を一般集団の予測値と比較した。
男女とも喉頭がんでSIRが高く、肺がんで全SPC死の3割以上
153万7,101例の生存者(平均年齢60.4歳、女性48.8%)のうち、1,119万7,890人年(平均7.3年)の追跡期間中に、15万6,442例がSPCに罹患し、8万8,818例がSPCで死亡した。
男性では、一般集団と比較して、30種のFPCのうち18種でSPC発症リスクが、27種でSPCによる死亡リスクが統計学的に有意に高かった。また、女性では、一般集団と比較して、31種のFPCのうち21種でSPC発症リスクが、28種でSPCによる死亡リスクが統計学的に有意に高かった。
男性では、SIRが最も高かったのは喉頭がんの生存者(SIR:1.75、95%信頼区間[CI]:1.68~1.83、罹患率:1万人年当たり373例)であり、SMRが最も高かったのは胆嚢がんの生存者(SMR:3.82、95%CI:3.31~4.39、死亡率:1万人年当たり341例)であった。また、女性では、SIRおよびSMRはいずれも、喉頭がん生存者(SIR:2.48、95%CI:2.27~2.72、罹患率:1万人年当たり336例、SMR:4.56、95%CI:4.11~5.06、死亡率:1万人年当たり268例)で最も高かった。
特定のFPCとSPCリスクとの関連には大きなばらつきが認められた。一方、喫煙または肥満に関連する一部のSPC(たとえば、肺がん、膀胱がん、口腔・咽頭がん、大腸がん、膵がん、子宮体がん、肝がんなど)だけで、全SPCの罹患率および死亡率のかなりの割合を占めており、肺がん単独で全SPCによる死亡の31~33%を占めた。
著者は、「これらの知見は、がん生存者における継続的なサーベイランスおよび新規がんの予防への取り組みの重要性を強調するものである」としている。
(医学ライター 菅野 守)