スタチンの「不必要な」無作為化試験、中国で2千件超/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2021/02/12

 

 中国で、冠動脈疾患に対するスタチン使用が臨床ガイドラインで強く推奨され始めた翌年以降に、スタチンの効果を検証するとして実施された不必要な(redundant)無作為化比較試験は2,000件超で、これら試験の被験者で対照群に割り付けられ、スタチンを服用しなかった被験者で発生した主要有害心イベント(MACE)は3,000例以上で、うち死亡が約600例だった。米国・ジョンズ・ホプキンズ大学のYuanxi Jia氏らが、2019年までに発表された冠動脈疾患に対するスタチンの無作為化比較試験を再調査し、明らかにした。不必要な臨床試験は資源を浪費し、とくにプラセボ対照試験の設定では、効果的な治療が受けられない患者に害を及ぼす可能性がある。科学出版物の最大の生産国となっている中国本土での臨床試験については、その必要性が深刻な課題になっていることが懸念されていた。今回の結果を踏まえて著者は、「患者を保護するため不必要な臨床試験を改める早急な改革が必要だ」とまとめている。BMJ誌2021年2月2日号掲載の報告。

ガイドライン推奨後2008年以降の試験について検証

 研究グループは、中国本土で冠動脈疾患患者を対象に行われたスタチンを評価する不必要な臨床試験を特定し、それらの試験でスタチン治療が行われなかった患者が経験した過剰なMACE発生件数を推定するため断面調査を行った。

 2019年12月までの文献データベースを検索し、中国本土で冠動脈疾患の患者を対象に行った、スタチンとプラセボまたは無治療を比較した2,577件の無作為化試験について分析を行った。被験者総数は25万810例で、冠動脈疾患の種別は問わなかった。

 「不必要な臨床試験」の定義は、スタチン使用が臨床ガイドラインで強く推奨され始めた翌年2008年以降に、臨床試験が継続中または開始された試験とした。

 主要アウトカムは、不必要な臨床試験の被験者で対照群に割り付けられ、スタチン治療を受けられなかったことにより発生した過剰なMACEの発生数、すなわちスタチンを服用していれば回避可能だった過剰なMACEの発生数だった。

 また、スタチンの効果の統計的有意性が示された時点を確認するため、累積メタ解析も実施した。

回避可能だったMACEは3,470例、死亡は559例

 2008~19年に発表された「不必要な臨床試験」は2,045件で、対照群の被験者総数は10万1,486例、スタチン非投与は2万4,638人年だった。

 報告された過剰なMACEは、3,470例(95%信頼区間[CI]:3,230~3,619)だった。

 内訳をみると、死亡559例(95%CI:506~612)、心筋梗塞の新規発症または再発973例(897~1,052)、脳卒中161例(132~190)、血行再建術83例(58~105)、心不全398例(352~448)、狭心症の再発または悪化1,197例(1,110~1,282)、およびその他のMACEが99例(69~129)だった。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)

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コメンテーター : 折笠 秀樹( おりがさ ひでき ) 氏

統計数理研究所 大学統計教員育成センター 特任教授

滋賀大学 データサイエンス・AIイノベーション研究推進センター 特任教授

J-CLEAR評議員

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