ChAdOx1 nCoV-19(AZD1222)ワクチンの2回接種は、主要解析の結果、中間解析と一致して新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対し有効であることが確認された。探索的事後解析では、パンデミックにおける供給不足時にできるだけ早く大多数の住民にワクチンを行き渡らせるための短い接種間隔プログラムより、3ヵ月の接種間隔のほうが2回目接種後の予防効果が改善しており利点があることも示された。英国・オックスフォード大学のMerryn Voysey氏らオックスフォード・ワクチン・グループが、AZD1222ワクチンに関する4つの臨床試験の統合解析結果を報告した。AZD1222ワクチンは、英国の医薬品・医療製品規制庁により標準用量を4~12週間の間隔で2回接種する緊急使用が承認され、英国でのワクチン導入計画では、ハイリスクの人々を対象にただちに初回接種を行い、12週間後に2回目接種を行うことになっていた。Lancet誌オンライン版2021年2月19日号掲載の報告。
4試験の統合主要解析と接種間隔別等の探索的事後解析を実施
研究グループは、単盲検無作為化比較試験である英国の第I/II相試験「COV001試験」および第II/III相試験「COV002試験」、ならびにブラジルの第III相試験「COV003試験」と、二重盲検無作為化比較試験である南アフリカの第I/II相試験「COV005試験」について、事前に設定されていた統合解析に主要解析と、探索的事後解析を行った。
試験では、18歳以上の健康成人がChAdOx1 nCoV-19ワクチン接種群(標準用量として5×10
10のウイルス粒子を2回接種)、または対照群(対照ワクチンまたは生理食塩水)に1対1の割合で無作為に割り付けられ、英国の試験では、一部の被験者に、1回目は低用量(ウイルス粒子2.2×10
10)、2回目は標準用量を接種した。
主要評価項目は、ウイルス学的に確定された症候性COVID-19で、2回目接種後14日以降に1つ以上の特定症状(37.8度以上の発熱、咳嗽、息切れ、嗅覚消失/味覚消失)を認め、核酸増幅検査(NAAT)陽性と定義した。副次有効性解析には、初回接種後22日以降の発症例を組み込んだ。また、免疫測定法および疑似ウイルス中和抗体価で評価した抗体反応を探索的評価項目とした。
主要解析対象集団は、盲検化された独立評価委員会により判定されたNAAT陽性のCOVID-19患者で、ベースライン時にSARS-CoV-2のN蛋白血清反応陰性かつ2回目接種後に最低14日間追跡調査が行われ、NAATで過去のSARS-CoV-2感染の証拠がないすべての被験者であった。安全性解析対象集団には、最低1回の接種を受けた全被験者が含まれた。
ワクチン有効率、全体66.7%、標準用量2回接種(接種間隔12週間以上)81.3%
2020年4月23日~12月6日の期間に4つの試験で2万4,422例が登録され、そのうち1万7,178例が主要解析に組み込まれた(ワクチン接種群8,597例、対照群8,581例)。データカットオフ日は、2020年12月7日であった。
主要評価項目を満たした症候性COVID-19患者は計332例発生した。ワクチン群84例(1.0%)、対照群248例(2.9%)で、ワクチンの有効率は66.7%(95%信頼区間[CI]:57.4~74.0)であった。初回接種後21日以降に、COVID-19による入院はワクチン群では確認されず、対照群で15例認められた。
重篤な有害事象は、ワクチン群0.9%(108/1万2,282例)、対照群1.1%(127/1万1,962例)に確認された。接種と関連がないと思われる死亡が7例(ワクチン群2例、対照群5例)発生し、うち対照群の1例はCOVID-19関連死であった。
探索的解析の結果、標準用量単回接種後、22~90日間におけるワクチンの有効性は76.0%(95%CI:59.3~85.9)であった。モデル解析では、初回接種から最初の3ヵ月間で感染予防効果は減弱しないことが示唆された。また、この期間中の抗体価は維持されており、90日目までの低下は最小限であった(幾何平均比[GMR]:0.66、95%CI:0.59~0.74)。
さらに、標準用量2回接種者において、プライム/ブースト(1回目と2回目)の間隔は、長いほうが短期間の場合より2回目接種後の有効性が高かった(有効率:12週間以上81.3%[95%CI:60.3~91.2]、6週間未満55.1%[95%CI:33.0~69.9])。18~55歳の被験者では、接種間隔が12週間以上の場合、6週間未満と比較して抗体価が2倍以上高いことが示唆された(GMR:2.32、95%CI:2.01~2.68)。
(医学ライター 吉尾 幸恵)