低・中所得国を含む5大陸で実施された前向きコホート研究「Prospective Urban Rural Epidemiology(PURE)研究」の結果、グリセミック指数(GI)が高い食事は、心血管疾患および死亡のリスクを増大することが明らかとなった。カナダ・トロント大学のDavid J.A. Jenkins氏らが報告した。GIと心血管疾患の関連性に関するデータのほとんどは、高所得国である西洋諸国の集団から得られたものであり、低・中所得国である非西洋諸国からの情報は少ない。このギャップを埋めるため、地理的に多様な大規模集団のデータが必要とされていた。NEJM誌オンライン版2021年2月24日号掲載の報告。
PURE研究の20ヵ国約14万人について解析
研究グループは、GIと心血管疾患および全死因死亡との関連を評価する目的で、PURE研究から高所得国4ヵ国(カナダ、スウェーデン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦)、中所得国11ヵ国(アルゼンチン、ブラジル、チリ、中国、コロンビア、イラン、マレーシア、パレスチナ領土、ポーランド、南アフリカ共和国、トルコ)、および低所得国5ヵ国(バングラデシュ、インド、パキスタン、タンザニア、ジンバブエ)のデータを分析評価した。
解析には、35~70歳の13万7,851人が含まれた。追跡期間の中央値は9.5年。
各国で検証済みの食物摂取頻度調査票を用いて食事摂取量を算出し、7つに分類された炭水化物食品(豆類、でんぷん質食品、野菜、果物、果実飲料、乳製品、砂糖入り飲料)の摂取量に基づいて、GIおよびグリセミック負荷(GL)を推定した。
主要評価項目は、主要心血管イベント(心血管死、非致死的心筋梗塞、脳卒中、心不全)または全死因死亡の複合エンドポイントで、GIおよびGLとの関連について多変量Cox frailtyモデルを用いてハザード比(HR)を算出し評価した。
心血管疾患の既往にかかわらず、高GIで心血管イベント/死亡リスクが増大
主要評価項目の解析対象は11万9,572人であった。このうち、追跡期間中に、複合エンドポイントが1万4,075人に発生した。死亡が8,780人(心血管死3,229人、非心血管死5,551人)で、8,252人に1つ以上の主要心血管イベントが認められた。
GIを五分位で分類し、年齢、性別等複数要因について調整後、GIが最も高い群(Q5:中央値91、IQR:90~91)は、最も低い群(Q1:中央値76、IQR:74~78)と比較して、ベースラインでの心血管疾患の既往の有無にかかわらず複合エンドポイントのリスクが高かった(既往ありのHR:1.51[95%CI:1.25~1.82]、既往なしのHR:1.21[95%CI:1.11~1.34])。高GIは、複合エンドポイントのうち心血管死のリスク増大とも関連していた。
GLに関しては、心血管疾患の既往ありではGIの結果と類似していたが(HR:1.34、95%CI:1.08~1.67)、既往なしでは有意な関連はみられなかった(HR:1.02、95%CI:0.91~1.13)。
(医学ライター 吉尾 幸恵)