無症状濃厚接触者へのコロナ抗原検査、検出感度は60%超/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2021/08/10

 

 重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染が確定した患者と濃厚接触した無症状および症状発現前の集団では、接触から5日後の迅速抗原検査によるSARS-CoV-2検出の感度は60%以上であり、ウイルス量のカットオフ値を感染力の代替指標とした場合の感度は85%以上に達することが、オランダ・ユトレヒト大学のEwoud Schuit氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2021年7月27日号で報告された。

2種類の検査の診断精度を評価する前向き横断研究

 研究グループは、SARS-CoV-2感染者と濃厚接触し、無症状および症状発現前の集団を対象に、接触から5日後における2種類の迅速抗原検査の診断精度を評価する目的で、前向き横断研究を行った(オランダ保健・福祉・スポーツ省の助成による)。

 参加者は、オランダ公衆衛生サービスの4ヵ所の検査施設で募集された。対象は、年齢16歳以上、公衆衛生サービスの検査/追跡プログラムまたはオランダ接触者追跡用携帯電話アプリケーション(CoronaMelder app)で同定された濃厚接触者で、登録時に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症状がみられない集団であった。

 主要アウトカムは、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法による検査を参照基準としたVeritor System(Beckton Dickinson製)およびBiosensor(Roche Diagnostics製)による迅速抗原検査の診断精度(感度、特異度、陽性・陰性予測値)とした。感染力の代替指標として、RT-PCR検査の結果が陽性の集団の95%が、ウイルス培養で陽性となるウイルス量のカットオフ値を用いた。

無症状者の感度58.7%、59.4%、有症状者84.2%、73.3%

 迅速抗原検査とRT-PCR法の結果が得られた4,274例(Veritor群2,678例、Biosensor群1,596例)が解析に含まれた。平均年齢はVeritor群45.9歳、Biosensor群40.7歳、女性がそれぞれ51.3%および47.3%で、検体採取の時点で症状の発現がみられたのは8.6%および10.1%であった。

 Veritor群は、8.7%(233/2,678例)がRT-PCR検査によりSARS-CoV-2感染と確定され、このうち149例でVeritorにより抗原が検出された(感度:63.9%、95%信頼区間[CI]:57.4%~70.1)。Biosensor群は、8.3%(132/1,596例)がRT-PCR検査陽性で、このうち83例でBiosensorにより抗原が検出された(62.9%、54.0~71.1)。

 検体採取時に無症状の集団における感度は、Veritor群(2,317例)が58.7%(95%CI:51.1~66.0)、Biosensor群(1,414例)は59.4%(49.2~69.1)であり、症状がみられる集団では、それぞれ84.2%(68.7~94.0、219例)および73.3%(54.1~87.7、158例)であった。

 ウイルス量のカットオフ値(≧5.2 log10 SARS-CoV-2 E遺伝子コピー数/mL)を感染力の代替指標とした場合、全体の感度はVeritor群が90.1%(95%CI:84.2%~94.4)、Biosensor群は86.8%(78.1~93.0)であり、一貫して無症状の集団の感度は、それぞれ88.1%(80.5~93.5)および85.1%(74.3~92.6)だった。

 すべての解析において、2つの迅速抗原検査の特異度は>99%であり、陽性予測値は>90%、陰性予測値は>95%であった。

 著者は、「これらの結果により、SARS-CoV-2感染が確定された患者の濃厚接触者は、症状の発現がない場合であっても、5日目以降にいずれかの迅速抗原検査で正確にSARS-CoV-2の検出が可能と考えられる」とまとめ、「この検査は、感染を見逃すと深刻な影響が出ると予測される場合には使用すべきでない」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)