治療可能な胃癌に対して、2群リンパ節郭清を伴う胃切除術は、東アジアにおける標準治療である。しかし、2群郭清に加えて大動脈周囲リンパ節郭清(PAND)を行う3群郭清(拡大郭清)が、生存率を改善するかどうかは論争の的となっている。国立がんセンター中央病院の笹子三津留氏ら日本臨床腫瘍研究グループが、国内で大規模な比較試験を行った結果、3群郭清は生存率改善につながらないと報告した。NEJM誌2008年7月31日号より。日本胃癌学会の胃癌治療ガイドライン速報でも取り上げられた報告。
胃癌患者523例を2群、3群郭清に割り付け5年間追跡
1995年7月~2001年4月にかけて、国内24病院で、治療可能な2b期、3期、4期の胃癌患者523例に対して胃の切除術を行う際、無作為に2群郭清単独(263例)か3群郭清(260例)に割り付けた。癌再発までは、いかなる補助療法も許可しなかった。
主要エンドポイントは全生存率。
5年生存率、再発までの期間でも有意差なし
手術関連の合併症発生率は、2群郭清単独群で20.9%、3群郭清群で28.1%だった(P=0.07)。
手術による死亡率は各群とも0.8%。術後30日以内で、両群間には吻合部縫合不全、膵瘻、腹腔内膿瘍、肺炎、全死因死亡率に有意差は見られなかった。3群郭清群では、手術時間の中央値は63分間長く、失血の中央値は230mL多かった。
5年生存率は、2群郭清単独群の69.2%に対して、3群郭清群では70.3%で、死亡ハザード比は1.03(95%信頼区間:0.77~1.37、P=0.85)だった。再発のない期間でも両群間に有意差はなく、再発ハザード比は1.08(0.83~1.42、P=0.56)だった。
このため「2群リンパ節切除単独と比較して、2群リンパ節切除術にPANDを加える拡大郭清を行っても、治療可能な胃癌の生存率を改善しない」と結論している。
(武藤まき:医療ライター)