再発または難治性多発性骨髄腫の患者の治療において、B細胞成熟抗原(BCMA)×CD3二重特異性T細胞誘導抗体teclistamabは、持続的で深い奏効をもたらし、忍容性も良好であることが、米国・Levine Cancer Institute/Atrium HealthのSaad Z. Usmani氏らが実施した「MajesTEC-1試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2021年8月10日号に掲載された。
teclistamabにおける 5ヵ国12施設の用量漸増第I相試験
本研究は、再発/難治性多発性骨髄腫の患者におけるteclistamabの安全性、忍容性および暫定的な有効性の評価を目的とする非盲検単群第I相試験であり、2017年6月~2021年3月の期間に、5ヵ国(米国、スペイン、フランス、オランダ、スウェーデン)の12施設で患者のスクリーニングが行われた(Janssen Research & Developmentの助成による)。
対象は、年齢18歳以上、国際骨髄腫作業部会(IMWG)の診断基準で多発性骨髄腫と診断され、ECOG PSは0/1、確立された治療で再発または治療抵抗性か不耐であり、プロテアソーム阻害薬と免疫調整薬による治療歴があり、BCMA標的薬による治療歴がない患者であった。
teclistamabは、0.3μg/kgの2週ごとの静脈内投与(1、15、28日の投与で1サイクル)で開始され(0.3~19.2μg/kg)、その後、薬物動態のデータに基づき週1回投与(1、8、15、21日の投与で1サイクル)に変更され(19.2~720μg/kg)、重症サイトカイン放出症候群のリスクを軽減するために、38.4μg/kg以上となるように用量が漸増された。また、患者の利便性の増大と安全性の改善のために、皮下投与(80~3,000μg/kg/週)の検討も行われた。
主要評価項目は、第II相試験の推奨用量を決定することであり、用量制限毒性の評価が行われ(第1部)、推奨用量での有害事象や有効性が検討された(第2部)。
teclistamabはBiTEに比べ半減期が長く、間欠投与が可能
157例(年齢中央値63歳[IQR:57~69]、女性46%、高リスクの細胞遺伝学的プロファイル33%、前治療ライン数中央値6[IQR:4~7]、幹細胞移植例85%)が登録され、全例が少なくとも1回のteclistamabの投与を受けた(静脈内投与:84例[2週ごと12例、週1回72例]、週1回皮下投与:73例)。
teclistamabの皮下投与では用量制限毒性は発現しなかった。また、teclistamabの最大耐用量には達しなかった。安全性、有効性、薬物動態、薬力学のデータから、第II相試験の推奨用量は、1,500μg/kgの週1回皮下投与とされた(40例、追跡期間中央値6.1ヵ月[IQR:3.6~8.2])。
第II相試験の推奨用量の投与を受けた40例で最も頻度の高かった試験薬投与後に発現または悪化した有害事象(TEAE)は、サイトカイン放出症候群(28例[70%]、すべてGrade1/2)および好中球減少(26例[65%]、このうち16例[40%]がGrade3/4)であった。
推奨用量の投与を受け、奏効の評価が可能であった40例における全奏効割合(厳格な完全奏効、完全奏効、最良部分奏効、部分奏効)は65%(95%信頼区間[CI]:48~79)で、最良部分奏効以上の割合は58%であった。また、推奨用量では、奏効期間中央値には未到達だった。
奏効例26例のうち22例(85%)は、追跡期間中央値7.1ヵ月(IQR:5.1~9.1)の時点で生存し、治療を継続していた。推奨用量のteclistamabは、目標曝露量以上で維持されており、継続的にT細胞の活性化が認められた。
著者は、「二重特異性IgG4抗体であるteclistamabは、BiTE(bispecific T-cell engager)に比べ半減期が長く、間欠投与が可能である。第II相試験で推奨される投与スケジュールと皮下投与法は、患者と医師の双方にとって利便性が高いと期待される」としている。
(医学ライター 菅野 守)