脳卒中の既往者または60歳以上の高血圧症の患者において、通常の塩の代わりに、塩化ナトリウムの成分含有が75%の代替塩を使うことで、脳卒中率や主要心血管イベント率、および全死因死亡率が低下したことが示された。オーストラリア・George Institute for Global HealthのBruce Neal氏らが、中国農村部600村に住む2万例超を対象に行った、非盲検クラスター無作為化試験の結果を報告した。NEJM誌オンライン版2021年8月29日号で発表した。代替塩は、ナトリウム値を低下させ、カリウム値を上昇させ、血圧を低下させることが示されている。しかし、心血管への有効性や安全性アウトカムへの影響は明らかになっていなかった。
中国600村を無作為に分け、代替塩使用と通常塩使用を比較
研究グループは2014年4月~2015年1月にかけて、中国農村部の600村を対象に、脳卒中の既往者または60歳以上で高血圧症の患者2万995例を対象に試験を開始した。
試験対象村を無作為に2群に分け、一方の村の被験者は代替塩(質量で塩化ナトリウム75%、塩化カリウム25%)を、もう一方の村の被験者は通常塩(塩化ナトリウム100%)を、それぞれ使用した。
主要アウトカムは脳卒中、副次アウトカムは主要心血管イベント、全死因死亡で、安全性アウトカムは臨床的高カリウム血症だった。
被験者2万995例の平均年齢は65.4歳、女性が49.5%、脳卒中既往者72.6%、高血圧症既往者は88.4%だった。平均追跡期間は4.74年。
脳卒中の発生率は、代替塩群29.14/1,000人年、通常塩群33.65/1,000人年で、代替塩群が低かった(率比:0.86、95%信頼区間[CI]:0.77~0.96、p=0.006)。
同様に、主要心血管イベント発生率(49.09 vs. 56.29/1,000人年、率比:0.87[95%CI:0.80~0.94]、p<0.001)、死亡率(39.28 vs. 44.61/1,000人年、0.88[0.82~0.95]、p<0.001)は代替塩群が低かった。
高カリウム血症による重篤有害イベントの発現頻度は、代替塩群3.35/1,000人年、通常塩群3.30/1,000人年で同程度だった(率比:1.04[95%CI:0.80~1.37]、p=0.76)。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)