重症喘息の治療において、抗インターロイキン-23p19モノクローナル抗体リサンキズマブに有益性はなく、プラセボと比較して初回の喘息悪化までの期間が短く、喘息悪化の年間発生率が高いことが、英国・レスター大学のChristopher E. Brightling氏らの検討で示された。研究の詳細は、NEJM誌2021年10月28日号に掲載された。
9ヵ国の第IIa相二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験
本研究は、重症喘息の成人患者におけるリサンキズマブの有効性と安全性の評価を目的とする24週間の第IIa相二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、9ヵ国48施設が参加し、2015年8月~2018年2月の期間に実施された(AbbVieとBoehringer Ingelheimの助成を受けた)。
対象は、年齢18~75歳、スクリーニングの少なくとも1年前に喘息と診断され、中~高用量の吸入コルチコステロイドと、1種以上の長期管理薬(controller)の投与を受けている患者であった。
被験者は、リサンキズマブ90mgを4週ごとに皮下投与する群またはプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。治療期間は24週で、観察期間は16週であった。
主要エンドポイントは、24週の治療期間中における初回の喘息悪化までの期間とされた。喘息悪化は、(1)ベースラインから2日以上持続する悪化(朝の最大呼気流量[PEF]の30%以上の減少、または24時間におけるレスキュー薬の噴霧回数のベースラインから50%以上の増加[噴霧回数の4回以上の増加に相当])、(2)重度の喘息増悪、(3)5項目喘息コントロール質問票(ACQ-5)のスコア(0~6点、点数が高いほどコントロールが不良)の0.75点以上の増加のいずれかと定義された。
初回喘息悪化までの期間:40日vs.86日
214例が登録され、リサンキズマブ群に105例(平均年齢[±SD]54±11歳、女性65.7%)、プラセボ群に109例(52±13歳、58.7%)が割り付けられた。
初回喘息悪化までの期間中央値は、リサンキズマブ群が40日と、プラセボ群の86日に比べ短かった(ハザード比[HR]:1.46、95%信頼区間[CI]:1.05~2.04、p=0.03)。
また、喘息悪化の年間発生の率比は1.49(95%CI:1.12~1.99)、重度急性増悪の年間発生の率比は1.13(0.75~1.70)であり、いずれもリサンキズマブ群のほうが不良であった。
喀痰を用いたトランスクリプトーム経路解析では、リサンキズマブによって、ナチュラルキラー細胞と細胞傷害性T細胞の活性化に関与する遺伝子、および1型ヘルパーT細胞と17型ヘルパーT細胞の転写因子の活性化に関与する遺伝子が、ダウンレギュレートされたことが示された。
リサンキズマブ療法に関連する安全性の懸念はなく、有害事象および重篤な有害事象の発生は両群で同程度であった。
著者は、「リサンキズマブは喀痰細胞数に影響を及ぼさなかったが、細胞傷害性T細胞やナチュラルキラー細胞を介する気道免疫に関連する遺伝子経路を減弱させた。これらの知見は、喘息治療の標的としてのインターロイキン-23/17型ヘルパーT細胞連関の役割を弱体化するものである」としている。
(医学ライター 菅野 守)