中等症~重症の小児(6~18歳)および成人喘息患者において、吸入ステロイド薬(ICS)と長時間作用型β2刺激薬(LABA)に長時間作用型抗コリン薬(LAMA)を併用する3剤併用療法は、2剤併用療法(ICS+LABA)と比較して重度増悪の減少ならびに喘息コントロールの中等度改善と有意に関連し、QOLや死亡に差は認められなかった。カナダ・マックマスター大学のLisa H. Y. Kim氏らが、システマティックレビューとメタ解析の結果を報告した。中等症~重症の喘息患者に対する3剤併用療法の有益性と有害性は、これまで不明であった。JAMA誌オンライン版2021年5月19日号掲載の報告。
無作為化試験20件、合計約1万2,000例について解析
研究グループは、MEDLINE、Embase、CENTRAL、ICTRP、FDA、EMAの2017年11月~2020年12月8日のデータベースから、中等症~重症喘息患者を対象に3剤併用療法(ICS、LABA、LAMA)と2剤併用療法(ICS、LABA)を比較した無作為化臨床試験を、言語を問わず検索した。
2人の研究者が独立して選択し、2人の評価者が独立してデータを抽出しバイアスリスクを評価した。メタ解析には、患者個々の増悪データを含むランダム効果モデルを用い、GRADEに従ってエビデンスの質を評価した。
主要評価項目は、重度増悪、喘息コントロール(7項目の喘息コントロール質問票[ACQ-7]で評価、各項目スコアは0[完全にコントロール]~6[重度のコントロール不良]、最小重要差は0.5)、生活の質(喘息関連QOL質問票[AQLQ]で評価、スコアは1[重度の障害]~7[障害なし]、最小重要差は0.5)、死亡率および有害事象とした。
3種類のLAMAを使用した20件の無作為化臨床試験が解析に組み込まれた。解析対象は、小児および成人喘息患者計1万1,894例(平均年齢52歳、範囲9~71歳、女性57.7%)であった。
3剤併用療法により、重度増悪が減少し喘息コントロールが中等度改善
エビデンスの質が高い臨床試験による3剤併用療法vs.2剤併用療法の比較において、重度増悪リスクの減少(9試験[9,932例]、22.7% vs.27.4%、リスク比:0.83[95%信頼区間[CI]:0.77~0.90])、および喘息コントロールの改善(14試験[1万1,230例]、標準平均差[SMD]:-0.06[95%CI:-0.10~-0.02]、ACQ-7の平均差:-0.04[95%CI:-0.07.~-0.01])が有意であることが示された。
一方、喘息関連QOL(7試験[5,247例]、SMD:0.05[95%CI:-0.03~0.13]、AQLQ平均差:0.05[95%CI:-0.03~0.13]、エビデンスの質:中)、ならびに死亡(17試験[1万1,595例]、0.12% vs.0.12%、リスク比:0.96[95%CI:0.33~2.75]、エビデンスの質:高)については、有意差はなかった。
3剤併用療法は、口喝および発声障害の増加と有意に関連していたが(10試験[7,395例]、3.0% vs.1.8%、リスク比:1.65[95%CI:1.14~2.38]、エビデンスの質:高)、治療関連および重篤な有害事象は両群で有意差はなかった(エビデンスの質:中)。
(医学ライター 吉尾 幸恵)