難治性院外心停止、体外心肺蘇生法vs.標準的蘇生法/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2022/03/04

 

 難治性院外心停止(OHCA)患者において、心停止状態での早期搬送/体外循環式心肺蘇生法(ECPR)/侵襲的診断と治療から成るケアバンドルは、標準的な蘇生法と比較して、180日後の神経学的アウトカム良好での生存率を改善しないことが、チェコ・カレル大学のJan Belohlavek氏らが実施した単施設無作為化臨床試験「Prague OHCA試験」の結果、示された。OHCAはアウトカムが不良であり、心停止状態での搬送/ECPR/即時侵襲的戦略の有益性については不明であった。JAMA誌2022年2月22日号掲載の報告。

180日後の神経学的アウトカム良好の生存を比較する単施設無作為化試験

 研究グループは、2013年3月1日~2020年10月25日の間に、心原性と推測されるOHCAに対して継続的に蘇生術を受けている18~65歳の成人256例を登録(自己心拍再開がなく5分以上二次心肺蘇生を受けており、心臓センターでECPRが利用できる場合に、登録が可能であった)。侵襲的戦略群と標準戦略群に、層別化(男性≦45歳、男性>45歳、女性≦45歳、女性>45歳)して無作為に割り付けた。患者は、死亡または180日目まで観察された(追跡調査終了日2021年3月30日)。

 侵襲的戦略群(124例)では、機械的胸部圧迫を開始した後、心肺蘇生術継続中に心臓センターのカテーテル室に直接搬送し、途中または到着時に自己心拍再開が得られなかった場合は体外生命維持装置(ECLS)開始後、侵襲的診断と治療(冠動脈、肺または大動脈血管造影と、経皮的冠動脈インターベンション)を行った。標準戦略群(132例)では、その場で通常の二次心肺蘇生を継続し、自己心拍再開が得られた場合に病院への搬送が開始され、侵襲的戦略を行うこととした。一部の患者では、標準戦略群から侵襲的戦略群へのクロスオーバーが認められた。

 主要評価項目は、無作為化から180日後の神経学的アウトカム良好(脳機能カテゴリー[CPC]スコア1~2と定義)を有する生存とした。副次評価項目は、30日後の神経学的回復(最初の30日以内の任意の時点でCPC 1~2と定義)、30日後の心臓回復(最低24時間、薬理学的または機械的心臓補助が不要と定義)などであった。

 なお、本試験は、事前に規定された無益性の基準を満たした時点で、データ安全性モニタリング委員会の勧告により中止された。

侵襲的戦略と標準戦略で、主要評価項目および副次評価項目に有意差なし

 256例(年齢中央値58歳、女性44例[17%])中、256例(100%)が試験を完遂した。

 主要解析において、侵襲的戦略群39例(31.5%)および標準戦略群29例(22.0%)が、180日後まで生存かつ神経学的アウトカムが良好であった(オッズ比[OR]:1.63[95%信頼区間[CI]:0.93~2.85]、群間差:9.5%[95%CI:-1.3~20.1]、p=0.09)。

 30日後の神経学的回復は、侵襲的戦略群38例(30.6%)、標準戦略群24例(18.2%)で確認され(OR:1.99[95%CI:1.11~3.57]、群間差:12.4%[95%CI:1.9~22.7]、p=0.02)、心臓回復はそれぞれ54例(43.5%)および45例(34.1%)で確認された(OR:1.49[95%CI:0.91~2.47]、群間差:9.4%[95%CI:-2.5~21]、p=0.12)。

 出血は、侵襲的戦略群のほうが標準戦略群より多く発現した(31% vs.15%)。

 著者は研究の限界として、単施設での試験で登録に限界があり、治療戦略のクロスオーバーが許可されていたことなどを挙げたうえで、「本試験は、臨床的に重要な差を検出するには検出力不足であった可能性がある」と述べている。

(医学ライター 吉尾 幸恵)