イソクエン酸脱水素酵素1(IDH1)をコードする遺伝子に変異のある急性骨髄性白血病と新たに診断された患者の治療において、ivosidenibとアザシチジンの併用療法はプラセボとアザシチジン併用と比較して、無イベント生存期間(EFS)を有意に延長し、発熱性好中球減少症や感染症の発現頻度は低いものの好中球減少や出血は高いことが、スペイン・Hospital Universitari i Politecnic La FeのPau Montesinos氏らが実施した「AGILE試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2022年4月21日号で報告された。
20ヵ国155施設の無作為化プラセボ対照第III相試験
研究グループは、
IDH1変異陽性急性骨髄性白血病の治療における、アザシチジン治療へのivosidenib追加の安全性と有効性の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験を行い、2018年3月~2021年5月の期間に、20ヵ国155施設で参加者を登録した(Agios PharmaceuticalsとServier Pharmaceuticalsの助成を受けた)。
対象は、18歳以上、新規の
IDH1変異陽性急性骨髄性白血病と診断され、強力な導入化学療法が適応とならず、Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)performance-statusスコア(0~4点、点数が高いほど機能障害度が高い)が0~2点の患者であった。
被験者は、ivosidenib(500mg、1日1回、経口投与)+アザシチジン(75mg/m
2体表面積、28日サイクルで7日間、皮下または静脈内投与)、またはプラセボ+アザシチジンの投与を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。
主要エンドポイントはEFSであり、無作為化の時点から、治療不成功(24週までに完全寛解が達成されない)、寛解後の再発、全死因死亡のいずれかまでの期間と定義された。
完全寛解、客観的奏効、IDH1変異消失の割合も良好
146例が登録され、ivosidenib群に72例(年齢中央値76.0歳[範囲:58.0~84.0]、女性42%、二次性25%)、プラセボ群に74例(75.5歳[45.0~94.0]、49%、28%)が割り付けられた。
追跡期間中央値12.4ヵ月の時点におけるEFSは、ivosidenib群がプラセボ群に比べ有意に長かった(治療不成功、寛解後の再発、死亡のハザード比[HR]:0.33、95%信頼区間[CI]:0.16~0.69、p=0.002)。また、無イベント生存割合は、ivosidenib群が6ヵ月時40%、12ヵ月時37%で、プラセボ群はそれぞれ20%および12%と推定された。
追跡期間中央値15.1ヵ月時の全生存期間中央値は、ivosidenib群が24.0ヵ月と、プラセボ群の7.9ヵ月に比し有意に延長した(死亡のHR:0.44、95%CI:0.27~0.73、p=0.001)。
完全寛解の割合は、ivosidenib群が47%(95%CI:35~59)であり、プラセボ群の15%(8~25)よりも高率だった(オッズ比[OR]:4.8、95%CI:2.2~10.5、p<0.001)。また、完全寛解の期間中央値はそれぞれ未到達(95%CI:13.0~評価不能)および11.2ヵ月(95%CI:3.2~評価不能)、12ヵ月時の完全寛解割合は88%および36%、完全寛解までの期間中央値は4.3ヵ月(範囲:1.7~9.2)および3.8ヵ月(1.9~8.5)であった。
客観的奏効(完全寛解、血球数の回復を伴わない完全寛解、部分寛解、形態学的に白血病ではない状態)の割合は、ivosidenib群が62%(95%CI:50~74)と、プラセボ群の19%(95%CI:11~30)に比べ有意に高かった(OR:7.2、95%CI:3.3~15.4、p<0.001)。奏効期間中央値は、それぞれ22.1ヵ月(95%CI:13.0~評価不能)および9.2ヵ月(6.6~14.1)だった。
完全寛解または部分的な血球数の回復を伴う完全寛解の検体における
IDH1変異消失の割合は、ivosidenib群が52%、プラセボ群は30%であり、骨髄単核細胞からの
IDH1変異消失のデータがある患者における
IDH1変異消失を伴う完全寛解の割合は、それぞれ33%および6%(p=0.009)であった。
全グレードの有害事象は、両群で貧血(ivosidenib群31%、プラセボ群29%)、発熱性好中球減少(28%、34%)、好中球減少(28%、16%)、血小板減少(28%、21%)、悪心(42%、38%)、嘔吐(41%、26%)の頻度が高く、出血イベント(41%、29%)と感染症(28%、49%)も高頻度に認められた。Grade3以上の有害事象では、貧血(25%、26%)、発熱性好中球減少(28%、34%)、好中球減少(27%、16%)、肺炎(23%、29%)、感染症(21%、30%)の頻度が高かった。全グレードの分化症候群は、14%および8%に認められた。
著者は、「ivosidenib+アザシチジン併用療法は、優れた
IDH1変異消失割合とともに持続的で深い奏効をもたらし、健康関連QOLや輸血依存離脱も良好であったことから、変異型IDH1蛋白を標的とする治療の有用性が明らかとなった」とまとめ、「今後、ベネトクラクスをベースとする治療との比較や、これらのレジメンの併用を評価する試験が期待される」としている。
(医学ライター 菅野 守)