活性型ビタミンD3、2型DMの発症予防に無効か/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2022/06/03

 

 活性型ビタミンD3製剤エルデカルシトールは、前糖尿病から2型糖尿病への発症予防効果は認められなかったものの、インスリン分泌が不十分な人に対する有益性を示唆する結果が得られた。産業医科大学病院の河原哲也氏らが、多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「Diabetes Prevention with active Vitamin D study:DPVD試験」の結果を報告した。観察研究では、ビタミンD欠乏がインスリン抵抗性および将来的な糖尿病のリスク増加と関連することが示されている。一方、ビタミンD補充については、2型糖尿病予防を目的とした無作為化比較試験では一貫した結果は認められていないが、先行研究でビタミンD欠乏症を伴う前糖尿病者に対して有益であることが示唆されていた。BMJ誌2022年5月25日号掲載の報告。

耐糖能異常からの2型糖尿病発症をエルデカルシトール群vs.プラセボ群で検討

 研究グループは、2013年6月1日~2015年8月31日の期間に、国内32施設において30歳以上の耐糖能異常(75g経口ブドウ糖負荷試験で空腹時血糖値<126mg/dLおよび負荷後2時間値が140~199mg/dL、かつ糖化ヘモグロビン[HbA1c]<6.5%)患者1,256例を登録し、エルデカルシトール(0.75μgを1日1回経口投与)群またはプラセボ群に1対1の割合に無作為に割り付け、3年以上投与した。

 主要評価項目は、2型糖尿病の発症で、事前に定めた基準(HbA1c≧6.5%、空腹時血糖値≧126mg/dL、負荷2時間後血糖値≧200mg/dL(11.1mmol/L)または随時血糖値≧200mg/dL)のうち少なくとも2つを満たす場合と定義した。

 副次評価項目は、耐糖能異常から正常型への移行、およびベースラインの交絡因子(年齢、性別、高血圧の有無、BMI、糖尿病家族歴、HbA1c、空腹時血糖値、2時間血糖値、25(OH)D、HOMA-IR、およびインスリン分泌指数)で補正後の2型糖尿病発症に関するエルデカルシトール群のプラセボ群に対するハザード比(HR)であった。さらに骨密度、骨代謝/糖代謝マーカーについても評価した。

2型糖尿病発症率、エルデカルシトール群12.5%、プラセボ群14.2%で有意差なし

 1,256例の患者背景は、571例(45.5%)が女性、2型糖尿病家族歴ありが742例(59.1%)、平均年齢61.3歳、ベースラインの血清25(OH)D濃度は平均20.9ng/mL(52.2nmol/L)で、548例(43.6%)は20ng/mL(50nmol/L)未満であった。

 追跡期間中央値2.9年において、2型糖尿病発症率はエルデカルシトール群で12.5%(79/630例)、プラセボ群で14.2%(89/626例)であった(HR:0.87、95%信頼区間[CI]:0.67~1.17、p=0.39)。

 耐糖能異常から正常型への移行は、エルデカルシトール群で23.0%(145/630例)、プラセボ群で20.1%(126/626例)に認められた(HR:1.15、95%CI:0.93~1.41、p=0.21)。多変量分数多項式Cox回帰分析による交絡因子補正後の2型糖尿病発症に関するHRは0.69(95%CI:0.51~0.95、p=0.020)で、エルデカルシトールは2型糖尿病発症を抑制し、とくに基礎インスリン分泌量が少ない患者において有益であることが示唆された(HR:0.41、95%CI:0.23~0.71、p=0.001)。

 また、追跡期間中、エルデカルシトール群ではプラセボ群と比較して、腰椎と大腿骨頸部の骨密度および血清オステオカルシン濃度が有意に上昇した(すべてのp<0.001)。

 重篤な有害事象は、両群で有意差は認められなかった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

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コメンテーター : 住谷 哲( すみたに さとる ) 氏

社会福祉法人恩賜財団大阪府済生会泉尾病院 糖尿病・内分泌内科 主任部長

J-CLEAR評議員