リサンキズマブ、クローン病の寛解維持療法に有効/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2022/06/13

 

 インターロイキン(IL)-23のp19サブユニットを標的とするヒト化モノクローナル抗体リサンキズマブの静脈内投与による寛解導入療法で臨床的奏効が得られた中等症~重症の活動期クローン病患者の寛解維持療法において、リサンキズマブ皮下投与はプラセボ(休薬)と比較して、52週の時点での臨床的寛解率および内視鏡的改善率が高く、忍容性も良好で、有害事象の頻度には差がないことが、ベルギー・ルーヴェン大学病院のMarc Ferrante氏らが実施した「FORTIFY substudy 1(SS1)試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2022年5月28日号に掲載された。

世界44ヵ国の無作為化プラセボ対照第III相試験

 FORTIFY SS1は、活動期クローン病の寛解維持療法における、リサンキズマブ皮下投与の有効性と安全性の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ(休薬)対照第III相試験であり、2018年4月~2020年4月の期間に、日本を含む44ヵ国273施設で参加者の登録が行われた(AbbVieの助成を受けた)。

 対象は、リサンキズマブ静脈内投与による2つの寛解導入試験(ADVANCE試験、MOTIVATE試験)の参加者のうち、12週時に臨床的奏効が得られた患者とされた。2つの寛解導入試験の参加者は、年齢16~80歳で、中等症~重症の活動期クローン病(クローン病活動指数[CDAI]:220~450、平均1日排便回数4回以上または腹痛スコア2以上、簡易版クローン病内視鏡スコア[SES-CD]6以上[孤立性回腸病変の場合は4以上])の患者であった。

 被験者は、寛解維持療法として、リサンキズマブ180mg(90mg製剤×2回とプラセボ×2回)、同360mg(90mg製剤×4回)、導入療法のリサンキズマブを休薬してプラセボ(休薬群、プラセボ×4回)をそれぞれ皮下投与する群に、1対1対1の割合で無作為に割り付けられ、8週ごと(0、8、16、24、32、40、48週目)の投与が行われた。患者、担当医、試験関係者には、治療割り付け情報が知らされなかった。

 主要複合エンドポイントは、52週の維持療法期間に少なくとも1回の投与を受けた患者における臨床的寛解(米国のプロトコルではCDAIが150未満、米国以外のプロトコルでは水様便または超軟便の平均1日排便回数が2.8回以下で、ベースラインより悪化せず、1日の平均腹痛スコアが1以下で、導入療法のベースラインより悪化しない場合)および内視鏡的改善(SES-CDがベースラインに比べ50%超減少[孤立性回腸病変でベースラインのSES-CDが4の患者ではベースラインから2以上減少]した場合)とされた。

幅広い患者の新たな治療選択肢となる可能性

 2つの寛解導入試験の参加者のうち542例がFORTIFY SS1試験に登録され、有効性の主解析には462例(intention-to-treat集団)が含まれた。リサンキズマブ180mg群が157例(平均[SD]年齢39.1[14.8]歳、女性57%)、同360mg群が141例(37.0[12.8]歳、43%)、休薬群は164例(38.0[13.0]歳、46%)だった。

 CDAIに基づく臨床的寛解率(米国)は、リサンキズマブ360mg群が52%(74/141例)と、休薬群の41%(67/164例)に比べ有意に高かった(補正後群間差:15%、95%信頼区間[CI]:5~24、p=0.0054)。排便回数と腹痛スコアに基づく臨床的寛解(米国以外)の割合は、それぞれ52%(73/141例)および40%(65/164例)であり、リサンキズマブ360mg群で有意に優れた(補正後群間差:15%、95%CI:5~25、p=0.0037)。また、内視鏡的改善(米国および米国以外)の割合は、それぞれ47%(66/141例)および22%(36/164例)であり、リサンキズマブ360mg群で有意に良好だった(補正後群間差:28%、95%CI:19~37、p<0.0001)。

 一方、リサンキズマブ180mg群と休薬群の比較では、排便回数と腹痛スコアに基づく臨床的寛解率(p=0.124)には差がなかったが、CDAIに基づく臨床的寛解率(55%[87/157例]vs.41%[67/164例]、補正後群間差:15%、95%CI:5~24、p=0.0031)および内視鏡的改善率(47%[74/157例]vs.22%[36/164例]、26%、17~35、p<0.0001)は、リサンキズマブ180mg群で有意に優れた。

 より厳格な内視鏡的エンドポイントや複合エンドポイント、炎症性生物マーカーの結果には、リサンキズマブの用量反応関係が認められた。また、2つの用量はいずれも全般に良好な忍容性を示した。

 有害事象の頻度は3つの群で同程度(リサンキズマブ180mg群72%、同360mg群72%、休薬群73%)で、重篤な有害事象(12%、13%、13%)や試験薬中止の原因となった有害事象(2%、3%、3%)の発現率もほぼ同じだった。3群で最も頻度の高い有害事象は、クローン病の悪化(11%、12%、17%)、鼻咽頭炎(9%、9%、14%)、関節痛(8%、9%、11%)、頭痛(5%、6%、6%)であった。重篤な感染症は、それぞれ3%、4%、4%で認められた。

 著者は、「リサンキズマブ皮下投与による寛解維持療法は、疾患の経過に変化をもたらす可能性のあるエンドポイントを達成し、他の先進的な治療で不耐または効果が不十分であった患者でも有効性が観察されており、今後、幅広い患者にとって新たな治療選択肢となるだろう」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 上村 直実( うえむら なおみ ) 氏

国立国際医療研究センター国府台病院 名誉院長

東京医科大学 消化器内視鏡学講座 兼任教授

J-CLEAR評議員