肥満者への行動的体重管理介入で体重とウエスト減/BMJ

プライマリケアにおける成人肥満者への行動的体重管理介入は、減量に有効で、ウエスト周囲長にも有意な減少効果が認められ、一般人への導入の可能性もあることが、英国・ラフバラー大学のClaire D. Madigan氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年5月30日号で報告された。
1年の体重変化をメタ解析で評価
研究グループは、プライマリケアにおける成人肥満者への行動的体重管理介入(減量を目的とする行動的介入)の有効性の評価を目的に、無作為化対照比較試験の系統的レビューとメタ解析を行った(英国国立健康研究所[NIHR]レスター生物医学研究センターの助成を受けた)。対象は、プライマリケアにおいて、年齢18歳以上でBMI≧25の集団への行動的体重管理介入を、無治療(通常ケアなど)や、同様の形式で強度だが内容の領域は異なる介入(他の行動に着目)、最小限の介入(印刷物などで通知)と比較し、12ヵ月以上の追跡期間で体重の変化を評価した無作為化対照比較試験とされた。
既報の系統的レビューに含まれた試験から本研究の適格基準に適合するものが選出され、加えて2018年1月1日~2021年8月19日の期間に医学・心理学文献データベース(Cochrane Central Register of Controlled Trials、Medline、PubMed、PsychINFO)に登録された論文が新たに検索された。
2人の研究者により、別個に適格基準を満たす研究が特定され、データが抽出され、Cochrane risk of bias toolを用いてバイアスリスクの評価が行われた。メタ解析では変量効果モデルを用いて各試験のデータが統合され、体重(kg)およびウエスト周囲長(cm)の変化の平均差が算出された。
主要アウトカムはベースラインから12ヵ月の時点までの体重の変化で、副次アウトカムはベースラインから24ヵ月以上または最終追跡時までの体重の変化とされた。ウエスト周囲長の変化は、12ヵ月時に評価を行った試験のデータが使用された。
介入群は3.7kg減量、ウエストが3.7cm減少
既報の2つのレビューに含まれた論文のうち22編と、新たに14編の論文が適格基準を満たし、合計36編(34試験、日本の1試験を含む)が解析の対象となった。女性限定の試験が4件あり、全体の65.9%が女性であった。ベースラインの平均BMIは35.2(SD 4.2)で、平均年齢は48(9.7)歳だった。追跡期間の範囲は12ヵ月~3年(中央値12ヵ月)。34試験のうち27試験(参加者8,000例)が、追跡期間12ヵ月の時点で主要アウトカムであるベースラインからの体重の変化を報告し、13試験(5,011例)が追跡期間24ヵ月以上の時点での体重の変化を報告していた。12ヵ月時のウエスト周囲長の変化を報告していたのは18試験(5,288例)だった。
12ヵ月の時点での介入群と対照群の体重変化の平均差は-2.3kg(95%信頼区間[CI]:-3.0~-1.6、I2=88%、τ2=3.38、p<0.001)であり、対照群に比べ介入群で良好な体重減少が得られた。ベースラインからの平均体重変化は介入群が-3.7(SD 6.1)kg、対照群は-1.4(5.5)kgだった。
追跡期間24ヵ月以上の時点での体重変化の平均差は-1.8kg(95%CI:-2.8~-0.8、I2=88%、τ2=3.13、p<0.001)であり、介入群で有意に体重が減少していた。また、最終追跡時の体重変化の平均差は-1.9kg(-2.5~-1.3、I2=81%、τ2=2.15、p<0.001)で、ベースラインからの平均体重変化は介入群が-3.2(SD 6.4)kg、対照群は-1.2(6.0)kgであった。追跡期間24ヵ月以上と最終追跡時の体重変化のデータには差がなかった。
一方、ウエスト周囲長の平均差は、12ヵ月の時点で-2.5cm(95%CI:-3.2~-1.8、I2=69%、τ2=1.73、p<0.001)であり、介入群で減少効果が優れた。ベースラインからの周囲長の平均変化は介入群が-3.7(SD 7.8)cm、対照群は-1.3(7.3)cmであった。
著者は、「プライマリケアで行われる体重管理介入は有効であり、体重管理の支援対策の一環として一般人にも提供すべきと考えられる」とし、「今後、減量に、より効果的な介入法を特定するための研究が必要である」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)
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