未治療のマントル細胞リンパ腫(MCL)高齢患者において、標準化学免疫療法(ベンダムスチン+リツキシマブ:BR療法)へのブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬イブルチニブの上乗せは、プラセボとの比較において、無増悪生存(PFS)期間を有意に延長したことが、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのMichael L. Wang氏らによる国際無作為化二重盲検第III相試験「SHINE試験」の結果、示された。これまでに未治療/再発/難治性MCLの患者17例を対象とした第Ib相試験で、BR療法へのイブルチニブ上乗せは、患者の76%が完全奏効(CR)を有し、安全かつ有効であることが示されていた。NEJM誌オンライン版2022年6月3日号掲載の報告。
BR療法+イブルチニブを対プラセボで評価
SHINE試験の対象は、中央施設でMCLと診断された65歳以上、未治療で疾患StageII~IV、最長径1.5cm以上の測定可能な病変1つ以上、Eastern Cooperative Oncology Groupパフォーマンスステータススコア0または1(スケール範囲:0~5、数値が大きいほど障害が大きいことを示す)、十分な臓器機能を有する患者であった。
研究グループは、被験者を無作為に1対1の割合で、イブルチニブ560mgを1日1回経口投与する群またはプラセボ群に割り付け、両群に、ベンダムスチン90mg/m
2(体表面積)(28日として定義された各サイクルの1日目と2日目に投与)およびリツキシマブ375mg/m
2(各サイクルの1日目に投与)を4週ごと6サイクル併用投与した。また、客観的奏効(完全または部分的奏効)を示した患者には、リツキシマブ維持療法を8週ごと最大12回追加投与した。
主要評価項目は、治験責任医師が評価したPFSであった。全生存(OS)および安全性も評価した。
PFSはイブルチニブ群80.6ヵ月vs.プラセボ群52.9ヵ月で有意差、OSは同等
2013年5月~2014年11月の間に、北米、南米、欧州、アジア太平洋地域の183の試験地(日本を含む)で計523例が無作為化を受け、261例がイブルチニブ群に、262例がプラセボ群に割り付けられた。
追跡期間中央値84.7ヵ月(主要解析のデータカットオフ日2021年6月30日)の時点における疾患の進行または死亡は、イブルチニブ群116例(44.4%)、プラセボ群は152例(58.0%)であった。PFS期間中央値はイブルチニブ群80.6ヵ月、プラセボ群52.9ヵ月であった(疾患の進行または死亡のハザード比[HR]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.59~0.96、p=0.01)。
CRを示した患者は、イブルチニブ群171例(65.5%)、プラセボ群151例(57.6%)であった(p=0.06)。客観的奏効が認められた患者の割合は、両群で同等であった(それぞれ89.7%、88.5%)。
データカットオフ日の時点で、死亡はイブルチニブ群104例(39.8%)、プラセボ群107例(40.8%)。OSは両群で同等であった(HR:1.07、95%CI:0.81~1.40)。7年時点のOSは、イブルチニブ群55.0%、プラセボ群56.8%。一方で、疾患の進行による死亡は、イブルチニブ群30例(11.5%)、プラセボ群54例(20.6%)であった。
治療期間中のGrade3/4の有害事象の発生率は、イブルチニブ群81.5%、プラセボ群77.3%であった。最も頻度の高かったGrade3/4の有害事象(各群で10%以上を占めたものと定義)は好中球減少症(イブルチニブ群122例[47.1%]、プラセボ群125例[48.1%])で、肺炎(それぞれ20.1%、14.2%)、リンパ球減少症(16.2%、11.9%)、貧血(15.4%、8.8%)、血小板減少症(12.7%、13.1%)、発疹(12.0%、1.9%)、および白血球減少症(10.0%、11.2%)が報告された。
(ケアネット)