米国の2000~19年の健康格差を体系的に分析したところ、5つの人種-民族別にみた平均余命の格差は広範かつ永続的に存在していたことを、米国・ワシントン大学のLaura Dwyer-Lindgren氏らGBD US Health Disparities Collaboratorsが報告した。米国の人種-民族間の平均余命には大きく永続的な格差が存在するとされていたが、これまでそのパターンが地域規模でどの程度異なるかは明らかになっていなかったという。今回、研究グループは、米国3,110郡について20年間にわたり、5つの人種-民族の平均余命を推定し、平均余命の時空間でみた変動および人種-民族間の格差を明らかにする解析を行った。Lancet誌2022年7月2日号掲載の報告。
5つの人種-民族別に2000~19年の平均余命の変化を推定し評価
研究グループは、US National Vital Statistics Systemからの死亡登録データとUS National Center for Health Statisticsからの人口統計データを、新規の小規模エリア推定モデルに適用し、2000~19年の郡および5つの人種-民族(非ラテン・非ヒスパニック系白人[白人グループ]、非ラテン・非ヒスパニック系黒人[黒人グループ]、非ラテン・非ヒスパニック系アメリカ先住民/アラスカ先住民[AIANグループ]、非ラテン・非ヒスパニック系アジア・太平洋諸島系アメリカ人[APIグループ]、ラテン・ヒスパニック系アメリカ人[ラテン系グループ])で層別化した、年間性別死亡率と年間年齢別死亡率を推定した。
これらの死亡率について、死亡診断書で人種および民族の誤りを修正し、その後に簡易生命表を作成して出生時の平均余命を推定した。
健康格差をなくし寿命を延伸するには、地域がカギ
2000~19年の平均余命の変動傾向は、人種-民族グループおよび郡で異なっていた。米国全体で平均余命の伸長が認められたのは、黒人グループ(変化:3.9歳[95%不確定区間[UI]:3.8~4.0]、2019年の平均余命:75.3歳[75.2~75.4])、APIグループ(2.9歳[2.7~3.0]、85.7歳[85.3~86.0])、ラテン系グループ(2.7歳[2.6~2.8]、82.2歳[82.0~82.5])、そして白人グループ(1.7歳[1.6~1.7]、78.9歳[78.9~79.0])だった。一方、AIANグループは変化が認められなかった(0.0歳[-0.3~0.4]、73.1歳[71.5~74.8])。
全米レベルでは、黒人グループと白人グループの平均余命の格差は対象期間中に縮小していた。しかしAIANグループと白人グループの同差は拡大していた。これらのパターンは、郡レベルにおいても広く認められた。
APIおよびラテン系グループと白人グループの平均余命の格差(白人グループのほうが平均余命は下回る)は、全米レベルでは2000~19年に拡大していた。しかし、郡レベルでみると、ラテン系グループは少数とはいえかなりの数(615/1,465郡[42.0%])でその差が縮小しており、APIグループは多数(401/666郡[60.2%])でその差が縮小していた。
すべての人種-民族グループで、平均余命の改善は対象期間の後期10年(2010~19年)よりも前期10年(2000~10年)のほうが郡全体にわたっており、大きかった。
結果を踏まえて著者は、「米国における社会的弱者の健康状態悪化と早期死亡の根本的原因に対処し、健康格差をなくして、すべての人の寿命を延伸するには、地域レベルのデータが不可欠である」と述べている。
(ケアネット)