ステント型血栓回収デバイスを用いた血栓除去術単独療法は、アルテプラーゼ静注+血栓除去術併用療法に対して非劣性は認められず、再開通率は低いことが、スイス・ベルン大学のUrs Fischer氏らが実施した「SWIFT DIRECT試験」の結果、示された。血栓除去術単独療法が静脈内血栓溶解+血栓除去術併用療法と同等の効果があるかどうかは議論が続いていたが、著者は、今回の結果を受け「適格患者における、血栓除去術前のアルテプラーゼ静注の割愛は支持されない」とまとめている。Lancet誌2022年7月9日号掲載の報告。
ステント型血栓除去デバイスによる血栓除去術、90日後の機能的自立を比較
「SWIFT DIRECT試験」は、欧州およびカナダの48施設で実施された、医師主導の前向き無作為化非盲検評価者盲検試験。研究グループは、CTAまたはMRAで頭蓋内内頸動脈、中大脳動脈第1セグメントまたはその両方に閉塞が確認され、発症から4時間30分以内にアルテプラーゼ静注が可能で、無作為化後75分以内に血栓除去術が施行可能な患者を、血栓除去術単独群とアルテプラーゼ静注+血栓除去術群(併用群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。
血栓除去術は両群とも市販のステント型血栓除去デバイスSolitaire(米国Medtronic製)を用い、可能な限り早期に施行された。併用群では無作為化後、可能な限り早期にアルテプラーゼ(0.9mg/kg、最大90mg)を60分間静脈内投与(投与開始時に総量の10%を急速投与)した。
有効性の主要評価項目は、90日後の修正Rankinスケール(mRS)スコアが2点以下(機能的自立)の患者の割合で、評価者盲検とした。単独群の併用群に対する非劣性は、Mantel-Haenszelリスク差の片側95%信頼区間(CI)下限値で評価し、非劣性マージンを12%と事前に規定した。安全性の主要評価項目は、症候性頭蓋内出血であった。
主要評価項目の非劣性を認めず、治療後の再開通率は91% vs.96%と併用群が良好
2017年11月29日~2021年5月7日に5,215例がスクリーニングされ、423例が無作為化された。このうち、同意辞退等の15例を除く408例が主要解析対象集団となった(単独群201例、併用群207例)。
90日後のmRSスコア2点以下の患者の割合は、単独群57%(114/201例)、併用群65%(135/207例)で、補正後群間リスク差は-7.3%(95%CI:-16.6~2.1%)、片側95%CI下限値は-15.1%で事前規定のマージン-12%を超えており、単独群の併用群に対する非劣性は示されなかった。
症候性頭蓋内出血は、単独群で201例中5例(2%)、併用群で202例中7例(3%)に認められた(群間リスク差:-1.0%、95%CI:-4.8~2.7)。
血管内治療後の再開通成功は、単独群のほうが観察された割合が低かった(91%[182/201例]vs.96%[199/207例]、群間リスク差:-5.1%[95%CI:-10.2~0.0]、p=0.047)。
(ケアネット)