新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のオミクロン変異株(B.1.1.529)流行中における5~11歳へのmRNAワクチンBNT162b2(ファイザー製)の2回接種により、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入院リスクは低下したことが、シンガポール・シンガポール大学のSharon H. X. Tan氏らによる検討で示された。2021年11月初旬に初めて確認されて以来、オミクロン変異株は多くの国で急速に拡大し、デルタ変異株(B.1.617.2)に置き換わり、優勢株となっている。これまで、小児におけるオミクロン変異株に対するワクチンの有効性に関するデータは不足していた。NEJM誌オンライン版2022年7月20日号掲載の報告。
2022年1月21日~4月8日における25万5,936例のデータを解析
研究グループは、オミクロン変異株が急速に拡大した2022年1月21日~4月8日におけるシンガポールの5~11歳の小児のデータを解析した。シンガポール保健省に報告され同省が保持している公式データに基づく解析である。
対象小児をワクチン未接種群、部分接種群(ワクチン1回目接種後1日以上、2回目接種後6日まで)、完全接種群(2回目接種後7日以上)に分け、報告されたすべてのSARS-CoV-2感染(PCR検査、迅速抗原検査、またはその両方で確認)、PCR検査で確認されたSARS-CoV-2感染、およびCOVID-19関連入院の発生率を評価項目とし、ポアソン回帰法を用いて各評価項目の発生率比からワクチンの有効性を推定した。
解析対象集団は計25万5,936例で、このうち17万3,237例(67.7%)が完全接種群、3万656例(12.0%)が部分接種群、5万2,043例(20.3%)が未接種群であった。
2回接種でCOVID-19関連入院に対する有効性は約83%
報告されたすべてのSARS-CoV-2感染、PCR検査で確認されたSARS-CoV-2感染、およびCOVID-19関連入院の粗発生率(100万人日当たり)は、ワクチン未接群がそれぞれ3,303.5、473.8、および30.0、部分接種群では2,997.3、391.2、および19.1、完全接種群では2,770.3、111.8、および6.6例であった。
部分接種群のワクチン有効率は、すべてのSARS-CoV-2感染に対しては13.6%(95%信頼区間[CI]:11.7~15.5)、PCR検査で確認されたSARS-CoV-2感染に対しては24.3%(19.5~28.9)、およびCOVID-19関連入院に対しては42.3%(24.9~55.7)であった。
完全接種群のワクチン有効率はそれぞれ36.8%(95%CI:35.3~38.2)、65.3%(62.0~68.3)、82.7%(74.8~88.2)であった。
(ケアネット)