虚血性心疾患が疑われる中等度狭窄患者において、冠血流予備量比(FFR)ガイド下での経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は血管内超音波法(IVUS)ガイド下と比較し、24ヵ月時点での死亡・心筋梗塞・再血行再建術の複合イベントの発生に関して非劣性であることが示された。韓国・ソウル大学病院のBon-Kwon Koo氏らが、韓国および中国の18施設で実施した無作為化非盲検試験「Fractional Flow Reserve and Intravascular Ultrasound-Guided Intervention Strategy for Clinical Outcomes in Patients with Intermediate Stenosis trial:FLAVOUR試験」の結果を報告した。冠動脈疾患患者のPCI評価において、血行再建術およびステント留置の決定にFFRまたはIVUSによるガイドを用いることができるが、両目的のためにどちらか一方のガイドを用いた場合の臨床アウトカムの差異は不明であった。NEJM誌2022年9月1日号掲載の報告。
1,682例を対象に、2年後の死亡・心筋梗塞・再血行再建術の複合を比較
研究グループは、虚血性心疾患が疑われ、冠動脈造影で中等度狭窄(目測で2.5mm以上の標的血管に40~70%のde novo狭窄)を認め、PCIの施行が検討されている19歳以上の患者を、FFRガイド群またはIVUSガイド群に、施設および糖尿病の有無で層別して1対1の割合で無作為に割り付けた。
PCIの実施基準は、FFRガイド群ではFFR≦0.80、IVUSガイド群では最小内腔面積≦3mm
2、または3~4mm
2でプラーク量>70%とした。
主要評価項目は無作為化後24ヵ月時点での全死亡・心筋梗塞・再血行再建術の複合で、IVUSガイド群に対するFFRガイド群の非劣性マージンは2.5%とした。副次評価項目は、主要評価項目の各イベント、脳卒中、シアトル狭心症質問票(Seattle Angina Questionnaire:SAQ)で評価した患者報告アウトカムなどであった。
2016年7月~2019年8月に4,355例がスクリーニングを受け、選択基準を満たした1,682例が、FFRガイド群838例、IVUSガイド群844例に割り付けられた。
FFRガイド下PCIはIVUSガイド下PCIに対して非劣性
PCI実施率は、FFR群44.4%、IVUS群65.3%であった。無作為化後24ヵ月間に、FFR群で67例、IVUS群で71例に主要評価項目の複合イベントが発生した。Kaplan-Meier法で推定した発生率は、FFR群8.1%、IVUS群8.5%であり、非劣性マージンを満たした(絶対差:-0.4%、片側95%信頼区間[CI]上限値:1.8%、片側97.5%CI上限値:2.2%、非劣性のp=0.01)。
副次評価項目については、FFR群とIVUS群で全死亡(1.3% vs.2.3%)、心筋梗塞(1.9% vs.1.7%)、再血行再建術(5.7% vs.5.3%)、脳卒中(0.7% vs.1.2%)のいずれも有意差はなく、SAQで評価した患者報告アウトカムも両群で類似していた。
(医学ライター 吉尾 幸恵)