未知の心房細動の検出において、着用型の連続自由行動下心拍モニタを用いた人工知能(AI)アルゴリズムガイド下標的スクリーニング法は、検出率を向上させ、スクリーニングの有効性を改善する可能性があることが、米国・メイヨークリニックのPeter A. Noseworthy氏らが実施した「BEAGLE試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2022年9月27日号で報告された。
心房細動検出能を評価する実践的な前向き介入試験
BEAGLE試験は、これまで認識されていなかった心房細動を特定するための、AIアルゴリズムガイド下標的スクリーニング法の有効性の評価を目的とする実践的な非無作為化介入試験であり、2020年11月~2021年11月の期間に参加者の登録が行われた(Mayo Clinic Robert D and Patricia E Kern Center for the Science of Health Care Deliveryの助成を受けた)。
脳卒中のリスク因子を有するが、心房細動の存在は知られておらず、日常臨床で心電図(ECG)による検査を受けた患者が、前向きに募集された。参加者は、最長30日間、連続自由行動下心拍モニタを着用し、データは携帯電話を介してほぼ即時に送信された。ECGにAIアルゴリズムが適用され、患者は高リスク群と低リスク群に分けられた。
主要アウトカムは、新たに診断された心房細動であった。2次解析では、適格基準を満たしたが試験に登録されなかった患者を実臨床の対照(非介入の通常治療群)とし、傾向スコアマッチング法を用いて、試験参加者(介入群)と対照を1対1の割合でマッチさせた。
心房細動負担も、高リスク群で高い
米国の40州から参加した1,003例が試験を完遂した。平均年齢は74.0(SD 8.8)歳、383例(38.2%)が女性で、ベースラインの平均CHA
2DS
2-VAScスコアは3.6(SD 1.2)点だった。
平均22.3日の連続心臓モニタリングにより、30秒以上持続する心房細動が低リスク群の370例中6例(1.6%)、高リスク群の633例中48例(7.6%)で検出され、高リスク群で検出率が有意に高かった(オッズ比[OR]:4.98、95%信頼区間[CI]:2.11~11.75、p=0.0002)。
同様のパターンが、6分以上持続する心房細動(低リスク群1.6% vs.高リスク群6.3%、OR:4.09、95%CI:1.72~9.75、p=0.0015)および24時間以上持続する心房細動(0.3% vs.1.6%、5.92、0.76~46.45、p=0.091)で観察された。また、心房細動負担(心房細動が記録された時間の割合)も、高リスク群で高かった(4.97% vs.20.32%、p=0.016)。
追跡期間中央値9.9ヵ月の時点で、通常治療群(1,003例)と比較して、AIガイド下スクリーニング群(1,003例)は心房細動の検出率が有意に優れ(通常治療群2.9% vs.AIガイド下スクリーニング群7.8%、ハザード比[HR]:2.75、95%CI:1.81~4.17、p<0.0001)、高リスク群では有意な差が認められたが(3.6% vs.10.6%、HR:2.85、95%CI:1.83~4.42、p<0.0001)、低リスク群では有意差はなかった(1.1% vs.2.6%、2.80、0.76~10.30、p=0.12)。
著者は、「これらの知見は、この集団における心房細動のリスクに関して、従来の臨床的なリスク因子に加えて、AIアルゴリズムはさらなる層別化が可能であることを示した」とし、「この方法を用いた検査プログラムは、(1)日常診療の一環として行われる既存のECGへのAIの適用、(2)既存の電子健康記録やワークフローを使用した臨床的特徴の提示や患者との意思疎通における付加的な活用、(3)最も恩恵を受ける可能性がある患者の遠隔モニタリング、の3つの場面の手段として効率的かつ大規模な実施が可能と考えられる」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)