痛風の既往がない60歳以上の虚血性心疾患患者において、アロプリノールは標準治療と比較し、非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中・心血管死の複合アウトカムに差はないことが、英国・ダンディー大学のIsla S. Mackenzie氏らが実施した「ALL-HEAT試験」の結果、示された。アロプリノールは痛風の治療に用いられる高尿酸血症治療薬であるが、これまでの研究でいくつかの心血管パラメーターに関して好ましい効果があることが示唆されていた。Lancet誌2022年10月8日号掲載の報告。
痛風既往のない虚血性心疾患患者約6,000例を対象に無作為化試験
ALL-HEAT試験は、イングランドおよびスコットランドの地域の医療センター18施設で実施された多施設共同前向き無作為化非盲検試験である。2014年2月7日~2017年10月2日の期間に、プライマリケア診療所424施設において、60歳以上で痛風の既往がない虚血性心疾患患者5,937例を登録し、アロプリノール群と標準治療群に1対1の割合で無作為に割り付けた。
アロプリノール群では、eGFRが30~59mL/分/1.73m
2の患者には100mg/日を2週間、その後は300mg/日、eGFRが60mL/分/1.73m
2以上の患者には100mg/日を2週間、300mg/日を2週間、その後は600mg/日(300mgを1日2回)を投与した。
なお、当初は中等度または重度の腎機能障害(eGFR:60mL/分/1.73m
2未満)患者は除外されたが、2016年4月4日にプロトコールが修正され、中等度腎機能障害(eGFR:30~59mL/分/1.73m
2)患者は組み入れ可能となった。
主要評価項目は非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中・心血管死の複合で、修正intention-to-treat集団(無作為化後に除外基準のいずれかを満たすことが判明した患者を除外)を対象に解析が行われ、Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)を推定し、アロプリノール群の標準治療群に対する優越性を検証した。安全性解析対象集団は、標準治療群は修正intention-to-treat集団、アロプリノール群はアロプリノールを少なくとも1回服用した患者とした。
非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中・心血管死の複合に有意差なし
無作為化された5,937例のうち216例が除外され、修正intention-to-treat集団は5,721例であった(アロプリノール群2,853例、標準治療群2,868例)。患者背景は年齢(平均±標準偏差)72.0±6.8歳、男性4,321例(75.5%)、白人5,676例(99.2%)で、平均追跡期間は4.8年であった。
主要評価項目の複合心血管イベントは、アロプリノール群で314例(11.0%、100人年当たり2.47件)、標準治療群で325例(11.3%、100人年当たり2.37件)に発生した。HRは1.04(95%信頼区間[CI]:0.89~1.21、p=0.65)であり、両群間に有意差は認められなかった。副次評価項目である全死因死亡は、アロプリノール群288例(10.1%)、標準治療群303例(10.6%)であった(HR:1.02、95%CI:0.87~1.20、p=0.77)。
(医学ライター 吉尾 幸恵)