早期アルツハイマー病へのlecanemab、第III相試験結果/NEJM

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2022/12/08

 

 早期アルツハイマー病において、可溶性アミロイドβ(Aβ)凝集体プロトフィブリルに選択的に結合するヒトIgG1モノクロナール抗体lecanemabの投与は、18ヵ月時点でプラセボよりも脳内アミロイド蓄積量を減少させ、認知および機能低下をわずかだが抑制した。一方で、有害事象との関連が報告されている。米国・イェール大学のChristopher H. van Dyck氏らが、1,795例を対象に行った第III相無作為化比較試験「Clarity AD試験」の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「早期アルツハイマー病におけるlecanemabの有効性と安全性を確認するための長期試験が必要だ」とまとめている。NEJM誌オンライン版2022年11月29日号掲載の報告。

18ヵ月後の臨床的重症度判定尺度の合計スコアを測定

 研究グループは、早期アルツハイマー病(アルツハイマー病による軽度認知障害・軽度認知症)で、ポジトロン断層法(PET)または脳脊髄液検査で脳内アミロイド病理が確認された50~90歳の患者を対象に、18ヵ月にわたる多施設共同二重盲検第III相試験を行った。

 被験者を1対1の割合で無作為に2群に分け、一方にはlecanemab(10mg/kg体重、2週ごとに静脈内投与)を、もう一方にはプラセボを投与した。

 主要評価項目は、臨床的認知症重症度判定尺度の合計(Clinical Dementia Rating-Sum of Boxes:CDR-SB、範囲:0~18、高スコアほど障害が大きいことを示す)スコアのベースラインから18ヵ月時までの変化だった。主要な副次評価項目は、PETにより評価した脳内アミロイド蓄積量、アルツハイマー病評価尺度(Alzheimer's Disease Assessment Scale:ADAS)の14項目認知サブスケール(ADAS-cog14、範囲:0~90、高スコアほど障害が大きいことを示す)、Alzheimer's Disease Composite Score(ADCOMS、範囲:0~1.97、高スコアほど障害が大きいことを示す)、Alzheimer’s Disease Cooperative Study-Activities of Daily Living Scale for Mild Cognitive Impairment(ADCS-MCI-ADL、範囲:0~53、低スコアほど障害が大きいことを示す)の変化とした。

脳内アミロイド蓄積量は対プラセボで-59.1センチロイド

 被験者数は合計1,795例で、lecanemab群が898例、プラセボ群が897例だった。ベースラインの平均CDR-SBスコアは、両群ともに約3.2だった。

 CDR-SBスコアは18ヵ月時点で、ベースラインからの補正後最小二乗平均変化値が、lecanemab群1.21、プラセボ群が1.66だった(群間差:-0.45、95%信頼区間[CI]:-0.67~-0.23、p<0.001)。

 698例を対象に行ったサブスタディでは、プラセボ群に比べlecanemab群で脳内アミロイド蓄積量の減少が大きかった(群間差:-59.1センチロイド、95%CI:-62.6~-55.6)。

 そのほか、ベースラインから18ヵ月時点までの平均変化に群間差が認められたのは、ADAS-Cog14スコア(群間差:-1.44、95%CI:-2.77~-0.61、p<0.001)、ADCOMSスコア(-0.050、-0.074~-0.027、p<0.001)、ADCS-MCI-ADLスコア(2.0、1.2~2.8、p<0.001)だった。

 lecanemab群では、インフュージョンリアクションが26.4%、画像上の脳内アミロイド関連の浮腫・浸出が12.6%に認められた。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)

専門家はこう見る

コメンテーター : 岡村 毅( おかむら つよし ) 氏

東京都健康長寿医療センター

上智大学

大正大学

J-CLEAR評議員