急性または亜急性の頸部痛/腰痛を有する患者において、集学的な生物心理社会的介入または個別化姿勢療法は、いずれも経過観察と比較して3ヵ月後の疼痛関連障害スコアをわずかではあるが統計学的に有意に改善した。ただし、個別化姿勢療法では1年間の脊椎関連医療費が経過観察より有意に増加した。米国・ブリガム&ウィメンズ病院・ハーバード大学医学大学院のNiteesh K. Choudhry氏らが、米国の33施設で実施した3群の実用的非盲検クラスター無作為化試験「SPINE CARE試験」の結果を報告した。JAMA誌2022年12月20日号掲載の報告。
急性/亜急性の頸部痛/腰痛患者を対象に、33施設でクラスター無作為化試験を実施
SPINE CARE試験の対象は、持続期間が3ヵ月以内の頸部痛または腰痛を主訴に来院した18歳以上の患者であった。過去3ヵ月間に、連続して7日以上麻薬を服用、あるいは6回以上の理学療法・カイロプラクティック治療・鍼治療・姿勢療法などを受けたことがある患者、過去6ヵ月以内に脊椎の手術・注射または神経根切断術を受けたことがある患者などは除外した。
研究グループは、参加したプライマリケア診療所33施設を、集学的な生物心理社会的介入(identify, coordinate, and enhance [ICE] care model、ICE)群、個別化姿勢療法(individualized postural therapy、IPT)群または通常ケア群に1対1対1の割合で無作為に割り付け、各施設の適格患者に割り付けられた治療を行った。
ICEケアモデルとは、STarT Backスクリーニングツールを用いて、理学療法、ヘルスコーチによる痛みを軽減するためのカウンセリング、およびかかりつけ医へのコンサルテーションを組み合わせ、適切な介入を行うケアモデルである。また、IPTは、エゴスキューメソッドを用いて標準化された方法で、自己効力感と自己管理を重視し、脊柱の筋肉の再調整とリバランスによって痛みを治療する試みである。通常ケア群では、介入を行わなかった(経過観察のみ)。
主要評価項目は、Oswestry Disability Index(ODI、0~100点、点数が高いほど疼痛関連障害が重度)スコアのベースラインから3ヵ月後までの変化量(臨床的に意義のある最小変化量を6と定義)、および1年間の脊椎関連医療費とした。各治療群と通常ケア群との比較では、有意水準を両側0.025とした。
疼痛関連障害スコアは2介入とも有意に改善、ただし姿勢療法では医療費が増加
2017年6月~2020年3月に2,971例が無作為化された(通常ケア群992例、ICE群829例、IPT群1,150例)。最終追跡は2021年3月であった。2,971例(平均年齢51.7歳、女性1,792例[60.3%])のうち、2,733例(92%)が試験を完遂した。
平均ODIスコアは、ICE群ではベースラインの31.2点から3ヵ月後には15.4点に、IPT群では29.3点から15.4点に、通常ケア群では28.9点から19.5点に改善した。3ヵ月後における平均ODIスコアの通常ケア群との絶対差は、ICE群で-5.8(95%信頼区間[CI]:-7.7~-3.9、p<0.001)、IPT群で-4.3(-5.9~-2.6、p<0.001)であった。
1年間の平均脊椎関連医療費は、ICE群1,448ドル、IPT群2,528ドル、通常ケア群1,587ドルであり、通常ケア群と比較しICE群では139ドル減(リスク比:0.93、95%CI:0.87~0.997、p=0.04)、IPT群では941ドル増(1.40、1.35~1.45、p<0.001)であった。
(ケアネット)