人工呼吸器を装着している重症患者にタンパク質を高用量投与しても、通常用量投与と比較して入院から生存退院までの期間は改善されず、急性腎障害や臓器不全スコアの高い患者に関してはアウトカムを悪化させる可能性があることが明らかとなった。カナダ・クイーンズ大学のDaren K. Heyland氏らが、日本を含む16ヵ国85施設の集中治療室(ICU)で実施した医師主導によるプラグマティックな単盲検無作為化試験「EFFORT Protein試験」の結果を報告した。国際的な重症患者の栄養ガイドラインでは、質の低いエビデンスに基づき広範なタンパク質投与量が推奨されているが、重症患者に高用量のタンパク質を投与したときの有効性は不明であった。著者は、「1日1.2g/kg(米国静脈経腸栄養学会2022年版ガイドラインの下限、もしくは、欧州静脈経腸栄養学会2019年版ガイドライン準拠の1日1.3g/kg)を処方し、処方量の80%達成に努めることがすべての重症患者にとって合理的かつ安全な方法と思われる。タンパク質の高用量投与のベネフィットが得られる重症患者のサブグループ(たとえば、熱傷、外傷、肥満、術後回復期の患者)を明らかにするためには、投与の最適な量とタイミングを定義するためのさらなる研究が必要である」と述べている。Lancet誌オンライン版2023年1月25日号掲載の報告。
栄養的に高リスクの重症患者にタンパク質投与、1日2.2g/kg以上と1.2g/kg以下を比較
研究グループは、重症患者に高用量のタンパク質を投与することにより臨床アウトカムが改善されるという仮説を検証する目的で、ICU入室から96時間以内かつスクリーニングから48時間以上人工呼吸器の装着が継続されると予想され、栄養的に高リスクの成人患者(18歳以上)を登録し、タンパク質の高用量投与群(1日2.2g/kg以上)と通常用量投与群(1日1.2g/kg以下)に、施設で層別化して1対1の割合で無作為に割り付けた(患者のみ盲検化)。タンパク質の投与は、ICU入室または人工呼吸器装着後96時間以内に、無作為化後できるだけ早く開始することとした。
有効性の主要アウトカムは、ICU入室後60日間における生存退院までの期間、副次アウトカムは60日死亡率であった。
累積生存退院率は46.1% vs.50.2%、60日死亡率は34.6% vs.32.1%
2018年1月17日~2021年12月3日の期間に、計1,329例が無作為に割り付けられ、介入前の早期死亡、退院、同意撤回を除く1,301例(高用量群645例、通常用量群656例)が解析対象となった。
60日までの累積生存退院率は、高用量群46.1%(95%信頼区間[CI]:42.0~50.1%)、通常用量群50.2%(46.0~54.3%)であった(ハザード比[HR]:0.91、95%CI:0.77~1.07、p=0.27)。施設や共変量に関して調整しても、生存退院までの期間に両群で差は認められなかった。
60日死亡率は、高用量群34.6%(222/642例)、通常用量群32.1%(208/648例)であった(相対リスク:1.08、95%CI:0.92~1.26)。
サブグループ解析の結果、生存退院までの期間および60日死亡率の両方に関して、入院時の急性腎障害(ステージ1~3)および臓器不全スコア高値(SOFAスコア9以上)の患者においては、タンパク質投与量との間に相互作用がみられ、タンパク質の高用量投与は害を及ぼす可能性があることが示唆された。
(ケアネット)