下肢灌流回復のために膝下血行再建術を必要とする包括的高度慢性下肢虚血患者では、初回の血行再建術として至適な血管内治療を行う戦略は、静脈バイパス手術と比較して、大切断回避生存率が有意に優れ、これは主に血管内治療で死亡数が少なかったためであることが、英国・University Hospitals Birmingham NHS Foundation TrustのAndrew W. Bradbury氏らが実施した「BASIL-2試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年4月25日号に掲載された。
3ヵ国の無作為化第III相試験
BASIL-2試験は、3ヵ国、41の血管外科(英国39、スウェーデンとデンマーク各1)が参加した非盲検無作為化第III相試験であり、2014年7月~2020年11月の期間に患者の登録が行われた(英国国立衛生研究所[NIHR]医療技術計画の助成を受けた)。
動脈硬化性疾患による包括的高度慢性下肢虚血で、膝下血行再建術(鼠径靱帯以下の再建術を加えてもよい)を要する患者が、初回の血行再建術として静脈バイパス手術または至適な血管内治療を受ける群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。
主要アウトカムは大切断回避生存であり、intention-to-treat集団における初回の大切断(足首より上部)または全死因死亡までの期間と定義された。
COVID-19で早期中止となったが、アウトカムの差との関連はない
包括的高度慢性下肢虚血患者345例(年齢中央値72.5歳[四分位範囲[IQR]:62.7~79.3]、女性19%)が登録され、バイパス群に172例、血管内治療群に173例が割り付けられた。追跡期間中央値は40.0ヵ月(IQR:20.9~60.6)だった。
大切断または死亡は、バイパス群では172例中108例(63%)で発生したのに対し、血管内治療群では173例中92例(53%)で発生し、バイパス群の大切断回避生存率が有意に低かった(補正後ハザード比[HR]:1.35、95%信頼区間[CI]:1.02~1.80、p=0.037)。
このうち、全死因死亡は、バイパス群が91/173例(53%)、血管内治療群は77/172例(45%)であり(補正後HR:1.37、95%CI:1.00~1.87)、大切断はそれぞれ35/173例(20%)、32/172例(18%)であった(1.23、0.75~2.01)。
両群とも、最も多い死因は心血管イベント(バイパス群61例、血管内治療群49例)と呼吸器イベント(25例、23例)であった(心血管と呼吸器イベントによる死亡数は相互排他的ではない)。
著者は、「本試験の患者の募集はCOVID-19の世界的流行により早期に中止された。COVID-19は、とくに対面での評価が必要なエンドポイントに関してフォローアップに大きな悪影響を及ぼしたが、観察された群間のアウトカムの差がCOVID-19と関連することを示すエビデンスはみられなかった」としている。
(医学ライター 菅野 守)