分娩後異常出血について、目盛り付き採血ドレープによる早期検出と、子宮マッサージ、オキシトシンやトラネキサム酸投与などによる一連の初期治療により、重度分娩後異常出血や出血による開腹手術または母体死亡の複合リスクの低下に結び付くことが示された。世界保健機関(WHO)のIoannis Gallos氏らが、ケニア、ナイジェリアなど80の病院を対象に行った国際クラスター無作為化比較試験の結果を報告した。NEJM誌オンライン版2023年5月9日号掲載の報告。
重度分娩後異常出血、出血による開腹手術や母体死亡の統合リスクを比較
研究グループは、経膣分娩を行った女性を対象に、分娩後異常出血に関する多種の介入を評価した。介入は、分娩後異常出血の早期検出を目的とした目盛り付き採血ドレープと、一連の初期治療(子宮マッサージ、オキシトシン、トラネキサム酸、静脈内輸液、検査、エスカレーション)で、介入群の病院に対しては実施戦略によるサポートを行った。対照群の病院では、通常ケアが行われた。
主要アウトカムは、重度分娩後異常出血(失血量1,000mL超)、出血による開腹手術、出血による母体死亡の複合だった。主要な副次アウトカムは、分娩後異常出血の検出、一連の治療順守だった。
主要複合アウトカムの発生率、通常ケア群4.3%に対し介入群1.6%
ケニア、ナイジェリア、南アフリカ共和国、タンザニアの2次レベルの病院、合計80ヵ所で、経膣分娩を行った21万132例を対象に試験を行った。
データの得られた病院および被験者において、主要アウトカムのイベント発生は、通常ケア群4.3%に対し、介入群は1.6%だった(リスク比:0.40、95%信頼区間[CI]:0.32~0.50、p<0.001)。
分娩後異常出血の検出率は、介入群93.1%、通常ケア群51.1%(率比:1.58、95%CI:1.41~1.76)、一連の治療実施率はそれぞれ91.2%、19.4%(4.94、3.88~6.28)で、いずれも介入群で大幅に高率だった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)