CHDイベント予測の改善、CACスコアvs.多遺伝子リスクスコア/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2023/06/02

 

 冠動脈疾患(CHD)のリスク予測において、冠動脈石灰化(CAC)スコアは多遺伝子リスクスコアより判別力が優れており、従来リスク因子に追加した場合、CACスコアはCHDリスクの判別と再分類を大きく改善したが、多遺伝子リスクスコアは改善しなかった。米国・ノースウェスタン大学のSadiya S. Khan氏らが、米国とオランダの2つのコホート研究の結果を報告した。CACスコアと多遺伝子リスクスコアは、CHDリスクを特定するための新規マーカーとしてそれぞれ個別に提案されているが、同一コホートでこれらのマーカーを直接比較した研究はこれまでなかった。JAMA誌2023年5月23・30日号掲載の報告。

PCE+CACスコアvs.PCE+多遺伝子リスクスコア

 研究グループは、2つの地域住民を対象とした観察研究、すなわち米国の6施設で実施された「Multi-Ethnic Study of Atheroscleosis(MESA)試験」、ならびにオランダのロッテルダムで行われた「Rotterdam Study(RS)試験」から、ベースラインで臨床的CHDのない45~79歳のヨーロッパ系住民参加者(それぞれ1,991例、1,217例)のデータを用いて解析した。

 CHDリスクは、従来リスク因子を用いて計算し(pooled cohort equations:PCE)、CACスコアはCT画像に基づきAgatston法を用いて算出、多遺伝子リスクスコアは遺伝子型別のサンプルを使用した。

 主要アウトカムは、CHDイベントの予測で、リスク閾値を7.5%として判別(discrimination)、較正(calibration)、再分類について評価した。

PCE+CACスコアで予測精度が改善

 被験者の年齢中央値は、MESA試験61.2歳(SD 9.7)、RS試験67.6歳(4.8)で、両試験とも女性被験者が半数超(それぞれ53%、52%)であった。CHD発生は、MESA試験では入手できた総追跡期間16.0年において187例(9.4%)、RS試験では同14.2年において98例(8.1%)であった。

 MESA試験では、log(CAC+1)および多遺伝子リスクスコアの両方が、10年CHD発症リスクと有意に関連していた。それぞれの1SD当たりのハザード比(HR)は、2.60(95%信頼区間[CI]:2.08~3.26)、1.43(1.20~1.71)であった。C統計値は、CACスコアが0.76(95%CI:0.71~0.79)、多遺伝子リスクスコアは0.69(0.63~0.71)であった。

 PCEにそれぞれを追加した場合のC統計量の変化は、CACスコア追加の場合0.09(95%CI:0.06~0.13)、多遺伝子リスクスコア追加の場合0.02(0.00~0.04)、両方を追加の場合0.10(0.07~0.14)であった。

 PCEに追加した場合の全体的なカテゴリー再分類は、CACスコア追加では有意に改善したが(0.19、95%CI:0.06~0.28)、多遺伝子リスクスコア追加では有意な改善はみられなかった(0.04、95%CI:-0.05~0.10)。

 PCEとCAC/多遺伝子リスクスコアモデルによる較正は適切であった(すべてχ2<20)。年齢中央値で層別化したサブグループ分析でも、同様の結果が示された。RS試験における10年リスクと、MESA試験の長期追跡調査(中央値16.0年)でも同様の所見が確認された。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

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コメンテーター : 野間 重孝( のま しげたか ) 氏

栃木県済生会宇都宮病院 院長

J-CLEAR評議員